歯科の唾液検査でわかることは? 口のタイプを調べてオーラルケアを最適化

歯科の唾液検査でわかることは? 口のタイプを調べてオーラルケアを最適化

(2023年12月12日公開)
口の中が乾いてネバネバしたり、痛んだり、何も口にしていないのに苦い味や酸っぱい味がしたり、口の中では様々なトラブルが起きることがあります。この予防や改善に役に立つのが歯科の唾液検査です。歯医者さんで受けることができる唾液検査には、様々な項目や種類があり、その結果は、治療方針の検討やオーラルケア指導に役立てられています。この記事では、様々な種類のある唾液検査について、検査でわかることやそのメリットを解説します。

               

歯科の唾液検査とは?

唾液検査と聞くと、どんな検査が思い浮かぶでしょうか。猛威を振るった新型コロナウイルスの検査や、インフルエンザの検査を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
唾液検査には他にも、ホルモンの検査やストレスの検査など様々なものがあり、歯科においても唾液検査が活用されています。
歯科では歯科医師や歯科衛生士が口内診査や画像検査をおこない、歯や歯ぐき、顎の状態など様々なことがわかります。一方で、口内を見たり画像検査をしたりしても見えない情報も唾液のなかには多くあります。
唾液検査は、そのような目に見えない情報を数値化・視覚化して見える化をすることができ、むし歯や歯周病、口臭などの口のトラブルの状況を把握したり、治療・予防を進めたりするための参考情報として活用されています。

唾液検査のやり方

唾液には、何もしていなくても自然と出てくる「安静時唾液」と、物を噛んだり味を感じたりしたときに出てくる「刺激唾液」があります。唾液検査では、このどちらかを採取して検査が行われることが多いです。
安静時唾液は、口の中に自然と出てきた唾液を容器に溜めて採取します。
一方で刺激唾液は、ガムを噛み続けて、噛んでいる間に出てくる唾液を容器に溜めたり、綿のようなものを噛み続けた後、唾液の染みた綿を回収したりして採取します。
より簡単に検査をする方法として、唾液を直接出すのではなく、水で口をすすいだ「口腔すすぎ液」を試料として検査をする場合もあります。

唾液検査でわかること

歯科の唾液検査といっても、検査の目的や測る内容、方法は多岐にわたります。ここでは、歯科で行われている様々な唾液検査について、わかること別に解説します。

唾液の質・量

唾液には、口内の汚れを洗い流したり、細菌の繁殖を抑えたり、歯の保護をしたりと、様々な役割があります。そのため、唾液の質と量は、むし歯や歯周病、口臭などの口内トラブルとも大きく関係しています。
唾液の役割について詳しくはこちらの記事で解説しています。

唾液の質「緩衝能」の検査

唾液の質の検査では、「緩衝能」の検査が行われます。緩衝能とは、酸性化した口の中を中性に戻す力です。むし歯菌は、食べかすなどに含まれる糖質を利用して酸を生成します。この酸を中和する力が緩衝能であり、いわばむし歯に対する防御力のような指標です。
緩衝能に影響する唾液中の成分濃度はあまり変化しないため、緩衝能が弱い方は、もともとむし歯になりやすい口内環境ともいえます。そのため、唾液の質を補うために量を増やすことが大事です。また、むし歯菌の栄養となる糖質の摂取量を少なくしたり、こまめなオーラルケアで口内の糖質をなくすことも大切です。

唾液の量の検査

唾液には、口内を潤して保護したり、口の中を洗い流したりする役割があるため、その分泌量は重要な指標です。また、唾液の分泌量が低下して口内が乾燥してしまう「ドライマウス」の指標にもなります。
安静時唾液の検査の場合、15分間唾液を出し続けて、その時間当たりの分泌量を測る方法が一般的です。15分間の間に1.5 mL以上の唾液が出ていることが健常の目安になります。
刺激唾液の場合は、パラフィンガムと呼ばれる味のしないガムを10分間噛み続けて、その間に出た唾液量を測定します。10分の間に10 mL以上の唾液が出ているかが基準となります。刺激唾液量の測定には、ガーゼを2分間噛み続けて、その重さがどれくらい増えたのかをみて判断する方法もあります。
唾液の量が少ない場合は、唾液の原料となる水分が足りていないか、水分の少ない唾液の分泌に偏っていることが考えられます。水分が少ない唾液はネバネバとした唾液であり、口の中がねばつく原因となります。
唾液量が少なくなる「ドライマウス」について、詳しくはこちらの記事でご紹介しています。

口内環境の状態

口内環境に変化があると、唾液中にも様々な成分が出てきます。これらの成分を測定して口内環境の指標としています。

むし歯の直接原因「酸性度」

先述の通り、むし歯菌は食べ物の中の糖質を利用して酸を作り出します。この酸によって口内が酸性化していくと、徐々に歯が溶けてしまいます。この酸性化の度合いを表すのが「酸性度」になります。
口内では食事の度に酸性化が起きていますが、唾液の緩衝能によって中性に戻り、一時的に溶けた歯も元に戻ります。しかし、食習慣や唾液の質の影響により口の中が酸性化をした状態が続くと、溶けてしまった歯が元に戻らず、むし歯となってしまいます。
また、酸が味覚にも影響して、何も口にしていないのに口の中が酸っぱい原因となることもあります。
唾液の酸性度が高い場合は、食事の内容や頻度、オーラルケアの仕方を見直すことが大切です。

出血の指標「潜血」

口内環境を表す唾液中の成分の代表的なものとして、「潜血」があります。潜血は、唾液中に血液が混ざっているかを表す指標です。潜血は歯ぐきの状態を表す指標として良く活用されています。
歯ぐきの状態が悪くなって腫れていると、少しの刺激で出血をしてしまいます。出血をすると、血液のなかにある赤血球が口内に出てきます。潜血では、この赤血球のなかにあるヘモグロビンを測定しています。
ヘモグロビンと同様に「LD(乳酸脱水素酵素)」も出血の指標となります。
歯ぐきの状態が悪くなる代表的な疾患が歯周病です。歯周病になると、歯磨きやフロスをしたときに出血をすることがありますが、目に見えて出血をしていなくても、潜血が高い場合には出血をしている可能性があります。

口内の炎症を表す「白血球」

口内の細菌が増えて歯ぐきの炎症が起きると、口内に「白血球」が出現します。そのため、歯ぐき状態の指標として白血球も測定をされています。
歯周病は、細菌の繁殖により歯ぐきが炎症を起こす疾患です。歯ぐきが炎症を起こして腫れがひどくなっていくと、歯ぐきから出血をしやすくなります。そのため、炎症を早期に捉えて治療を施していくことが大切です。

口内環境に応じて変化する「タンパク質」

「タンパク質」は生物が生きていく上で欠かせないものであり、粘膜や歯ぐきなどの組織、物質の代謝をする酵素、免疫を担う抗体などもタンパク質からできています。
口内にも様々なタンパク質が存在しています。また、タンパク質は口内の細菌も作り出します。さらに、血液中には唾液に比べて大量のタンパク質が存在します。
そのため、口内環境が変化して細菌が繁殖したり、歯ぐきや粘膜が傷付いて剥がれたり、出血をしたりすると、口内のタンパク質が増加します。
このタンパク質も、口内環境の指標として唾液検査で測定されています。

口内に存在する細菌

口内には多種多様な細菌が住み着いています。むし歯や歯周病は、これらの細菌が繁殖して歯や歯ぐきにダメージを与えることが原因です。また、口臭の主な原因も、これらの細菌が作り出したニオイ物質です。そのため、唾液検査による口内細菌のチェックも、口内環境に合わせたケアをしていく助けとなります。

むし歯菌の活性度

細菌は糖質を使ってエネルギーを作り出すと共に酸やさまざまな物質も産生します。この産生量を測ることで、むし歯菌がどれだけ活発に活動しているかを調べることができます。
むし歯菌の活性度が高い場合、それだけ口内が酸性化しやすい状況とも言えるため、むし歯になりやすい口内環境と考えられます。
むし歯菌が活性化する原料となる糖質の摂取量を少なくしたり、摂取した糖質を口のなかから無くすためにこまめなオーラルケアをしたりすることが大切です。

むし歯菌の種類

唾液検査によっては、むし歯菌の種類や多さを検査することができます。むし歯の原因となる代表的な細菌は、「ミュータンス菌」と「ラクトバチルス菌」です。
ミュータンス菌は、糖質を使って酸を作り出すだけではなく、ネバネバした成分である不溶性グルカンも作り出して、歯の表面や隙間にくっついて塊となります。これが歯垢(プラーク)です。
歯垢は、むし歯菌にとって過ごしやすい住処となってしまい、酸と不溶性グルカンを作り出す温床となってしまいます。
ラクトバチルス菌も、糖質を使って酸を作り出します。ラクトバチルス菌はいわゆる「乳酸菌」の一種で、様々な食品中に含まれています。
ラクトバチルス菌は、酸などによってできた歯の凹凸に入り込み、酸を生成して穴を広げていきます。

歯周病菌の種類

むし歯菌だけでなく、歯周病菌も唾液検査によって見つけることができます。
歯周病菌はむし歯菌とは異なり、歯を溶かすのではなく、歯ぐきを傷付けていきます。ミュータンス菌の作り出した歯垢の中に一緒に潜むため、歯周病の予防にも歯垢の除去が重要になります。
歯周病の原因となる菌にも複数の種類があり、P.g.菌、T.f菌、T.d菌の3種類が特に歯周病で見つかりやすい菌種になります。
P.g菌はPorphyromonas gingivalisのことで、「ジンジバリス」ともいわれます。P.g菌は強力なタンパク質分解酵素を使って歯ぐきを傷付けるほか、炎症を促す物質を大量に出し、その影響で歯の根元の骨である歯槽骨が壊されていきます。そのため、口内にP.g菌がいる場合は、歯周病になりやすい環境ともいえます。菌が繁殖しないよう、歯垢を適切に除去していくことが大切です。
歯周病菌の検査では、細菌のDNAを検査して菌種を特定する検査や、歯周病菌の出す酵素を測定する検査が行われています。

細菌繁殖の指標「アンモニア」

これまで挙げてきた通り、細菌が繁殖して分泌する成分には様々なものがありますが、その一つに「アンモニア」があります。アンモニアは、口内の総細菌数が多いほど濃度が高くなることがわかっています。
そのため、唾液中のアンモニアは、口内の細菌数が多いか少ないかを間接的に示す口腔清潔度の指標として活用されています。
細菌は、歯の表面や歯と歯ぐきの隙間に溜まった歯垢のなかや、舌の表面に蓄積した舌苔にも潜んでいます。舌苔は味覚異常の原因にもなり、何も食べていないのに苦味を感じたり、味を感じにくくなったりすることもあります。
アンモニアが高い場合は、より良いオーラルケアについて歯科医院でアドバイスをしてもらいましょう。唾液量が少なくなって口のなかが乾きやすくなっていることも考えられます。

唾液検査のメリット・デメリット

唾液検査では、むし歯や歯周病の診断ができるわけではありません。それでも唾液検査がおこなわれているのは、次のようなメリットがあるためです。

唾液検査のメリット

口内環境の弱いところに気付ける

むし歯や歯周病、口臭などの口内トラブルが起きやすい人は、口内環境に特徴があることもあります。口内環境は、ライフスタイルや性・年齢の影響、体調などの影響を受けるため、人それぞれで異なります。
唾液検査は、人それぞれに違っている口内環境をチェックして、自分の弱いところに気付くきっかけになります。

詳細なアドバイスを受けられる

むし歯や歯周病の検査に加えて、唾液検査の結果から自分の生活習慣やオーラルケアの特徴が見えてきます。これらの特徴を踏まえて、より自分に合わせた詳細なアドバイスを受けることができます。

口内環境を数値化・視覚化できる

目に見えない口内環境を数値やグラフなどで知ることができるため、専門的な知識がなくても自分の口内環境を理解しやすくなります。

唾液検査のデメリット

唾液検査は、自分の口内環境を把握して、より自分にあったケア方法を選択したり、普段の生活習慣やオーラルケアを見直したりするために役立ちますが、治療に欠かせない検査ではありません。
そのため、保険診療で受けることができず、全額自己負担で検査を受ける必要があります。この費用負担がデメリットとなります。

唾液検査はどんな人におすすめ?

唾液検査には様々な種類がありますが、歯を失わずに一生を過ごすため、より良いオーラルケアを行なうためには、一度唾液検査を受けてみることをおすすめします。
ここでは、唾液検査をおすすめする人とおすすめする検査をご紹介します。

むし歯になりやすい

昔からむし歯になりやすいと感じていたり、生活環境が変わってからむし歯ができるようになったりしている場合は、むし歯菌の検査や、唾液の緩衝能・酸性度を測ってみるといいかもしれません。
もともとの緩衝能が低かったり、ライフスタイルの変化に合わせてむし歯菌や酸性度も変わって、むし歯になりやすくなっているのかもしれません。

何度も治療をしている

一度むし歯や歯周病を治療しても再発してしまう場合は、むし歯菌や歯周病菌の数や種類を調べてみるのがいいかもしれません。
また、むし歯も歯周病も、口内に溜まった歯垢が原因となります。歯垢ができやすいような口内環境かは、唾液の質や量も関係しています。唾液量や緩衝能を検査してみるのもおすすめです。

口内環境に違和感がある

日頃から食習慣に気をつけていてオーラルケアもしっかりしているけれど、口が渇きやすかったり、味に違和感があったりする場合は、唾液の量や緩衝能、アンモニアを検査してみるといいかもしれません。
歯科医院で検査と合わせて生活習慣やケア方法のアドバイスも受けることで、自分では気付かなかった課題が見えることもあります。
また、唾液検査におかしなところがなければ、ホルモンバランスや栄養バランスの乱れなど、他の原因に気付くきっかけにもなります。

口臭に不安がある

口臭の指摘を受けたことはないけれど口臭がしていないか不安な方にも、唾液検査はおすすめです。
口臭の主な原因の一つは、歯周病菌の作り出す揮発性の硫黄系化合物量です。歯周病の原因菌であるP.g.菌もアンモニアの産生菌のため、歯周病菌の検査や、白血球やタンパク質などの歯ぐきの指標と共に、アンモニアを検査してみるといいかもしれません。
検査結果に問題がなければ、口内環境による口臭の不安を解消して自信にもつながります。また、口内以外の口臭原因に気付くきっかけにもなります。

もっと歯を大事にしたい

「歯は一生のものなのでもっと大事にしたい」という方にも唾液検査はおすすめです。
口内環境は歯磨きの良し悪しだけではなく、ライフスタイルや、年齢などの影響も受けます。ライフステージの変化や、体調の変化に合わせて唾液検査を行ない、今の自分にあったオーラルケアの仕方や、生活習慣の見直しに役立ててください。

唾液検査の費用や詳しい方法は?

唾液検査は基本的に保険適用外です。また、これまでご紹介してきた通り、検査内容も様々なため、検査費用も大きく異なります。
また、検体の採取方法や検査前の注意事項も検査によって異なります。
ここでは、唾液検査の2つの例をご紹介します。
※ここでご紹介する内容は歯科医院によって異なる場合があります。詳しくは検査を受ける歯科医院にご確認ください。

【シルハ】口腔すすぎ液で6つの指標を検査

「シルハ」は口腔すすぎ液を使って短時間で6つの指標をまとめて検査ができるのが特徴です。

測定方法

水で10秒間、口をすすいだものを試料として検査します。測定にかかる時間は約5分のため、検査を受けたその日中に結果を説明してもらうことができます。

測定項目

唾液中の次の6つの項目をまとめて測定できます。
  • むし歯菌の活性度
  • 酸性度
  • 緩衝能
  • 白血球
  • タンパク質
  • アンモニア

費用

だいたい1,000円~3,000円くらいの費用で検査が受けられます。

注意事項

検査の2時間前から飲食・喫煙を控える必要があります。また、歯磨きやマウスウォッシュなどのオーラルケアも2時間前までに済ませる必要があります。

【デントカルト】むし歯菌の種類や唾液量を検査

「デントカルト」は刺激唾液を使ってむし歯菌の種類や量を検査できます。

測定方法

味のしないガムを5分間噛み続けて刺激唾液を採取し、試料とします。測定にかかる時間は測定項目によって異なり、ミュータンス菌の検査には48時間、ラクトバチルス菌の検査には96時間かかります。そのため、検査結果は後日あらためて説明をしてもらいます。

測定項目

ミュータンス菌とラクトバチルス菌に加えて、唾液量と緩衝能も測定できます。

費用

だいたい3,000円~5,000円くらいの費用で検査が受けられます。

注意事項

検査の1時間前から飲食・喫煙・歯磨きを控える必要があります。また、検査の6時間以内に殺菌作用のある歯磨き粉やマウスウォッシュを使用した場合も検査に影響が出るおそれがあります。

唾液検査はどこで受けられる?

唾液検査は、歯科医院によって受けられるところ・受けられないところがあります。自分の受けたい唾液検査ができるかどうかは、歯科医院のWebサイトを見てみたり、事前に問い合わせをして確認をしてみましょう。Webサイトには掲載をしていなくても唾液検査が受けられることもあります。
先に紹介したシルハができる歯科医院は、こちらで検索をすることもできます。

唾液検査は「きっかけ」

唾液検査では様々なことがわかります。ただし、検査をしただけでは口内環境は良くなりません。検査をきっかけに自分の生活習慣やオーラルケアを見直すことで、より良い口内環境にすることができます。歯科医院で検査に合わせてカウンセリングを受けることで、自分の口内環境にとって最適な生活習慣やケア方法はどんなものなのか、ぜひ聞いてみてください。

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