唾液の働きとは? 唾液が出る仕組みや種類まで徹底解説!

唾液の働きとは? 唾液が出る仕組みや種類まで徹底解説!

(2023年9月30日公開)
私たちが普段何の気なしに生活していても分泌されている唾液ですが、何のために出るのでしょう。唾液にはとても多くの役割があります。また、唾液には2つの種類があり、さまざまなことが原因となって分泌量が多くなったり少なくなったりしています。本記事では唾液の分泌の仕組みから、その種類、分泌が多い・少ない際の原因や影響について解説します。

               

唾液の仕組みとは

唾液は、耳の近くや顎の下などにある唾液腺で作られています。唾液腺は、口の中に開口部があり、そこから口内に唾液を分泌しています。唾液腺には、三大唾液腺と呼ばれる耳下腺、舌下腺、顎下腺と、小唾液腺と呼ばれる口唇腺、頬腺、口蓋腺 、臼歯腺、舌腺などがあります。唾液の95 %は大唾液腺からの分泌です。
唾液の分泌は、私たちの意思に関わらずに働く2種類の自律神経、交感神経と副交感神経によってコントロールされており、これを自律神経の二重支配といいます。交感神経が優位に働くと、粘度が高い、ネバネバした唾液が分泌されます。一方、副交感神経が優位に働くと、水分が多いサラサラとした唾液が分泌されます。

唾液には種類がある

唾液には刺激により分泌される「刺激唾液」と、刺激がないときにも分泌される「安静時唾液」の2種類があります。刺激唾液を分泌させる刺激となるものは、食べ物を食べたときの味やニオイ、化学物質、噛む動きなどの物理的なものなどが挙げられます。さらに、唾液にはネバネバの唾液とサラサラの唾液があり、刺激唾液と安静時唾液でそれぞれの分泌される割合が異なっています。

ネバネバの唾液

ネバネバした唾液は、三大唾液腺のうち主に舌下腺から分泌される唾液です。緊張したり、イライラしたりして交感神経が優位に働いているときに分泌されます。唾液のネバネバを作り出す成分はムチンです。ネバネバ唾液にはこのムチンが多く含まれており、口内の粘膜の保護をしたり保湿したりする役割があります。

サラサラの唾液

サラサラした唾液は三大唾液腺のうち主に耳下腺から分泌されます。リラックスしているときに働く副交感神経が優位になると、サラサラした唾液が分泌されます。サラサラした唾液は水分が多く流動性が高いため、口の中を洗い流す働きがあるほか、食事の時にも分泌されて食べ物を湿らせまとめる作用などがあります。

たくさんある!唾液の重要な働きについて

唾液には2種類あり、それぞれ働きが異なることを解説しました。また、唾液の働きはひとつではありません。たとえば、食べかすを洗い流したり、食べ物を飲み込みやすくしたり、粘膜を保護したりするなど、多くの作用があるのです。唾液の働きについて、さらに詳しく説明します。

食べかすを洗い流す

食べたものは食べかすとなって口の中や歯の表面に残ります。食べかすをそのままにしておくと細菌の栄養源となってしまい、細菌の塊(プラーク)が増えるもととなります。その結果、むし歯や歯周病、口臭などの口のトラブルにつながります。唾液には口の中を洗い流す作用があるため、これらの食べかすを食道に流して口の中を清潔に保てます。

食べ物を飲み込みやすくする

唾液には食べ物と混ざり、食べ物との塊(食塊)をつくるという重要な働きがあります。よく噛むことで唾液と混ざり合い食塊となった食べ物は、バラバラにならずに簡単に飲み込めるため、消化管へと食べ物を運ぶ助けになる上、誤って気管に食べ物が入ることを防ぐ効果もあります。

口内の粘膜の保護する

唾液のネバネバの成分のひとつであるムチンには、口内の粘膜の保護をする作用があります。口内の表面にある粘膜は外部刺激に弱い組織です。ムチンは粘膜の表面で粘液層を形成し、バリアとして作用します。粘膜を保護することで発声がしやすくなることもわかっています。

消化を助ける

唾液には、消化酵素であるアミラーゼが含まれています。アミラーゼはデンプンを麦芽糖へと分解することで、胃腸でのデンプンの吸収を助けています。あまり噛まずに食事をした場合、唾液と食べ物が十分に混ざらないため、唾液によるデンプンの分解が進まず、胃でデンプンを消化することになります。そうすると、胃の負担が大きくなり、栄養素の吸収にも時間がかかります。

味を感じる橋渡しをする

物を食べると味を感じます。これは味を感じる元となる味物質が唾液に溶け出し、舌の上にある「味蕾」と呼ばれる器官に届けられるからです。よく噛まずに食べた場合、味物質が唾液に溶け出さないため、味を十分に感じられません。その結果、より味の濃いものを求めるようになり、塩分や糖分を多く摂る原因にもなってしまいます。

細菌の活動を抑える・侵入をブロックする

唾液に含まれるリゾチームは、細菌の細胞壁を壊すことができる酵素です。ほかにも唾液には、ペルオキシダーゼという酵素やラクトフェリンという糖タンパク質、IgAという抗体が含まれています。ペルオキシダーゼは抗菌作用のある成分を作り出し、ラクトフェリンは細菌の発育を阻害します。IgAは細菌にくっつくことで、細菌が粘膜に付着し、侵入することを阻止します。このため、唾液には細菌の活動を抑えて粘膜内への侵入をブロックする作用があります。

歯の再石灰化を助けて保護をする

食べかすが残っていると、口の中の細菌により酸が作られます。この酸によって、歯の表面のエナメル質からリン酸やカルシウムが溶け出てしまう、「脱灰」が起きます。脱灰が進むと、歯に穴が開いてむし歯になってしまいます。唾液にはこの脱灰から歯を守る力があります。
唾液には酸を中和する作用があり、唾液の中のリン酸やカルシウムを歯の表面に戻して、エナメル質を修復できます。この作用を「再石灰化」と呼びます。食べ物を食べると、口内では脱灰と再石灰化が起きます。唾液を多く出すことで、脱灰の時間を短くして再石灰化を促し、むし歯予防と歯の保護ができることがわかっています。

活性酸素を分解し病気の原因を防ぐ

活性酸素は強い酸化力を持っており、白血球が異物を攻撃するときに使われますが、炎症が起きたときにも大量に出て、歯ぐきなどの組織を傷付けてしまいます。唾液中のペルオキシダーゼには、活性酸素を分解する作用があります。活性酸素を分解することで、細胞が必要以上に傷つけられ、老化や病気を引き起こす過剰な酸化を防ぐ効果が見込まれます。

唾液の1日の分泌量

唾液腺から分泌される唾液の量は、1日あたり1,000~1,500 mlほどです。安静時は1分あたり0.3~0.4 ml、刺激時には1分あたり1~2 ml分泌されます。男性のほうが女性より分泌量が多く、これは体格の違いにより分泌腺の大きさも違うためです。
また、唾液の分泌量には女性ホルモンも関わっていて、女性ホルモンの減少が唾液の分泌量を減らす一因でもあります。また、男女にかかわらない理由として、加齢も唾液の分泌量が変化する原因のひとつです。70代以上の方は唾液の分泌量が減少し、ドライマウスになりやすい傾向があります。
唾液の分泌量は、時間帯によっても変化します。明け方の唾液の分泌量は少なく、夕方に向かって分泌量は増えていきます。朝起きたときに、口の中が乾いていると感じている方もいるのではないでしょうか。すっぱいものを食べると唾液の分泌が活発になるため、朝起きたら梅干しやレモンなどを口にするのも唾液を出すためによい方法です。

唾液の分泌量が少ない場合の原因

唾液腺からの唾液の分泌は、自律神経である交感神経と副交感神経によって二重支配されています。これらはストレスなどの影響を受けやすく、交感神経と副交感神経のバランスが乱れて唾液の分泌量に影響を及ぼします。また、唾液の分泌量に影響する要因はほかにも多くあります。続いて、分泌量が減少する原因について詳しく説明します。

ストレス

唾液の分泌は自律神経によって支配されています。ストレスを感じると交感神経系が優位になりネバネバの唾液の分泌量が増え、サラサラな唾液の分泌量が減ります。ネバネバ唾液は水分が少ないため、口がネバついて乾燥しやすくなります。

加齢による口腔機能低下

年齢を重ねると、口の周りの筋肉や歯が衰えるため咀嚼力が落ちます。咀嚼力が落ちると、噛む回数や顎を動かす頻度が減少して唾液の分泌を促す物理的な刺激が少なくなるため、唾液の分泌量が減少します。
また、唾液腺のなかで唾液を作り出している腺房細胞も加齢に伴い萎縮したり減少したりしてしまい、唾液の分泌量が減ることも知られています。

生活習慣の乱れ

唾液は咀嚼をすることで十分な量が分泌されます。このため、よく噛まないと分泌量が減ります。早食いは、食べ物をよく噛まずに飲み込んでしまうため、唾液の量が減る一因です。
喫煙も、血流を妨げてしまうことで唾液の分泌量に悪影響を与えます。
また、規則正しい生活をしないと自律神経系にも影響が及びます。その結果、ストレスの場合と同様に唾液分泌が乱れる原因となります。

病気や薬による影響

糖尿病や腎臓病などの病気になると、唾液の分泌量が減ることがわかっています。また、シェーグレン症候群も唾液腺などに炎症が生じる病気のため、唾液の分泌量が減少します。ほかにも抗うつ薬、抗精神病薬、降圧剤、ステロイド、抗ヒスタミン剤などを服用していることで、副作用での唾液の分泌量の減少が認められています。

水分不足による影響

体の中の水分が減ると、水分補給を促すため、私たちの体はまず唾液の分泌を減らします。喉が渇いたと感じるのはこのためです。また、唾液は血液から作られます。水分が不足すると、唾液の元になる血液の水分量も減るため、唾液の量が減ってしまいます。

ホルモンバランスの影響

女性ホルモンであるエストロゲンが減少することで、唾液の分泌が減ることが知られています。これは更年期の女性に顕著に現れます。

唾液の分泌量が少ない場合どんな影響がある?

さまざまな作用や役割のある唾液ですが、分泌が少なくなった際の影響にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

むし歯や歯周病、口内炎などのリスクが高まる

唾液には、口の中を洗い流して清潔に保つ作用があります。唾液が少ないと、口の中に食べかすが残り、細菌が繁殖してしまいます。増えた細菌によってむし歯などの口の中の病気が起こりやすくなります。

味を感じにくくなる

食べたものの味は、味成分が唾液に溶け出して味蕾に届くことによって感じられます。唾液が少なくなると、味覚が低下したり異常な味に感じたりします。さらには、唾液の減少で口内が乾燥することで、味蕾が摩擦により傷ついてしまいやすくなり、味覚を感じにくくなることがあります。

口臭が強くなりやすい

唾液の分泌が少ないというのは、食べかすが口の中に残りやすく、唾液による抗菌作用も働きづらい状態です。その結果、食べかすが流されず残ってしまい、細菌が繁殖して、口臭が発生しやすくなってしまいます。

食べ物がつまりやすくなる

食べ物の塊は、そのままではバラバラで飲み込みにくい状態です。食べ物をよく噛み、唾液と混ぜることで湿らせてひと塊にすることで、食べ物は飲み込みやすくなります。唾液の分泌が少なくなると食べ物を塊にすることができず、飲み込みづらくなります。しかも、食べ物が口内や喉の粘膜にくっつき、つまってしまうおそれもあります。

発音がしにくくなる

唾液が少なくなると、舌を動かしにくくなり、発音障害が起こります。唾液は口の中を潤し、舌や頬を滑らかに動かすための潤滑油の働きがあるからです。

風邪をひきやすくなる

唾液の中にはリゾチームといった酵素やラクトフェリンという糖タンパク質、IgAという抗体などウイルスや細菌の侵入を防ぐ物質が含まれています。唾液が少ないと、これらの物質による防御反応がうまく働かなくなるために風邪をひきやすくなります。また、口の中が乾燥することで粘膜自体に炎症が起き、粘膜からウイルスが侵入しやすい状態を引き起こしてしまいます。

唾液の分泌量が少ない場合の対処法

ここまで唾液の分泌量が少なくなる原因について解説しました。分泌量が少ないと口内や全身の不調の原因となりえます。では、唾液の分泌量を増やすためにはどのようなことを行うのがよいでしょうか。

唾液腺マッサージをおこなう

唾液の分泌量を回復させるための効果的な方法のひとつは、唾液腺マッサージです。唾液は大唾液腺と小唾液腺と呼ばれる場所から分泌されますが、そのうちの大唾液腺を優しくマッサージしてみましょう。毎日の食事前や就寝前、オーラルケアの前に行うだけで効果が得られます。
こちらの記事に詳しい方法がありますので、あわせて読んでみてください。

よく噛んで食べる

自然にしていても分泌される唾液ですが、食事中にしっかり咀嚼すると、耳下腺から多くの唾液を分泌できることが知られています。ガムを噛むこともしっかり咀嚼することにつながるため、唾液の分泌が少ない際の対処法として効果的です。
ガムを食べるときにはキシリトールなどの歯によい成分を高配合している製品を選ぶようにしましょう。キシリトールについての詳細はこちらの記事で紹介しています。

唾液の分泌を促す食べ物を食べる

唾液の分泌が少ない朝にレモンや梅干しなどのすっぱい食べ物をとることは効果的だとご紹介しました。すっぱいものは耳下腺からの唾液の分泌に寄与するためです。ほかにも、昆布に含まれるアルギン酸や納豆に含まれるポリグルタミン酸も唾液の分泌を促す成分として知られています。これらの食材を取り入れることで、唾液の分泌を増やしましょう。

水分をこまめにとり口の中を潤す

唾液の99.5 %は水分です。体内の水分が減ると、まず唾液の分泌が減ってしまいます。水分補給をこまめに行い、口の中を潤すことも唾液の分泌に有効な方法です。
水分補給の仕方にもコツがあります。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

解消しない場合は医療機関の受診をする

マッサージ、ガムを噛む、食べ物に気をつける、水分補給をするといったこれまでにおすすめした方法を行っても症状が改善しない場合は、医療機関の受診をおすすめします。唾液が少ないと食べることや話すことが億劫になり、生活の質(QOL)が下がるからです。また、処方されている薬によっては、唾液の分泌を抑えるものもあるため、早めに受診すればそれだけ早く症状が緩和するでしょう。

唾液の分泌量が多い場合の原因

唾液の分泌が少ない場合とは逆に、唾液の分泌が多いと感じている方もいます。その原因について説明します。

加齢による口腔機能低下

高齢者の方は口の周りや口内の筋肉の衰えにより、うまく口が閉じられなかったり、そもそも嚥下機能が低下してしまったりして、よだれとして唾液が口から溢れてしまいます。これが高齢者で唾液が多いと感じる原因のひとつです。

妊娠中のつわり時

妊娠するとホルモンの分泌のバランスが変わり、唾液の分泌量が増えます。さらに、つわりのときに味覚が変わり、自分の唾液を飲み込めなくなるため、唾液が多くなったと感じる方がいます。これがつわり時に唾液の分泌が多いといわれる原因です。

風邪やアレルギーにより喉が腫れている

喉が腫れると、痛みによって食べ物や飲み物を飲み込むのが辛くなった経験はありませんか。喉が痛いと、唾液を飲み込むことも大変です。このため、風邪やアレルギーで喉が腫れると、飲み込めなかった唾液が口の中にたまり、唾液の分泌量が多くなったように感じます。

胃もたれ・胃炎

胃の不調がある場合、胃酸が食道の方まで逆流してしまうことがあります。唾液には粘膜を保護する作用があるため、食道粘膜を保護するために唾液が多く分泌されます。また、胃の病気の治療薬の中には唾液の分泌を増やすものもあります。胃もたれや胃炎の症状を抑えるためにこれらの薬を服用していると、唾液の分泌が増える場合があります。

唾液の分泌量が多いとどんな影響がある?

唾液の分泌量が増える原因についてご紹介しましたが、実際に分泌量が多くなると私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか。

食事が取りづらくなる

唾液の分泌量が増えると、唾液を飲み込むことが不快に感じます。唾液すら飲み込むのが大変になるため、食事もとりづらいです。

何度も唾液を飲み込むため気分が悪くなりやすい

唾液の分泌量が増えると、唾液を飲み込む回数が増えます。それによって気分が悪くなることもあり、また気分が悪くなると唾液が増えるという悪循環に陥ります。

唾液の分泌量が多い場合の対処法

唾液の分泌が多く、生活に影響を与える場合は、唾液分泌過多症という状態です。この場合、どのように対処したらよいでしょうか。唾液分泌過多症には、実際に唾液の分泌が増えている場合と、唾液がうまく飲み込めないなどの理由で唾液が増えているように感じる場合があります。

原因が特定できる場合は根本の治療を行う

唾液は、口の中や体の健康にとって大切な役割を担っています。そのため、唾液自体を吐き出すよりも、唾液の分泌量が多くなったり、唾液を飲み込めなかったりする原因を突き止め、根本から解決することが大切です。
加齢により口内や口の周りの筋肉が衰え、嚥下機能が低下し唾液が溢れてしまう場合には、口の筋肉を鍛えるトレーニングが有効です。
風邪やアレルギーで喉が腫れてしまい、唾液を飲み込むことができない場合や、胃もたれや胃炎などの胃の不調により唾液が多くなる場合は、医療機関で診察してもらうとよいでしょう。

口内を清潔に保つ

唾液が多くて不快に感じるのであれば、口の中をゆすいだりすることですっきりさせましょう。また、口の中が汚れていると、清浄に保とうとするために唾液の分泌量が増えます。清潔に保つことで、唾液の分泌量の改善が見込まれます。

まとめ

唾液にはたくさんの働きがあります。多すぎても少なすぎても影響が出ますが、どちらも適切な対処法があります。唾液の分泌が少ない場合は食べ物やガムをよく噛み口の周りを鍛えたり、唾液腺マッサージをしたりすることで、唾液を出してQOLを向上させましょう。一方、唾液の分泌が多い場合は我慢せず医療機関を受診し、診察をしてもらいましょう。

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