歯周病になりやすい人の特徴は?効果的な予防法を徹底紹介

歯周病になりやすい人の特徴は?効果的な予防法を徹底紹介

(2024年4月16日公開)
歯周病と聞くと、口内ケアをしていない人がなるイメージではないでしょうか。実は、それ以外に生活習慣や持病など、様々な理由で歯周病にかかりやすい人がいます。この記事では、歯周病にかかりやすい人の特徴や予防法について詳しく解説します。

               

こんな人は要注意! 歯周病になりやすい人の特徴

歯周病と言うと、口内のケアが不十分なことに起因して発症するイメージがありませんか?確かに、歯垢(プラーク)は歯の磨き残しによって歯にこびりついた細菌の塊です。歯垢が多くなるとやがて毒素を出し、歯ぐきを攻撃します。これによって炎症が起こることを歯周病といいます。歯周病を放置すると歯を支える骨を溶かすまで症状が進行することもあります。

そのため、毎日丁寧に歯を磨き、歯垢を除去することは歯周病の予防に重要です。しかし、歯周病になる原因は口内のケアが不十分なことだけではありません。生活習慣・遺伝的要因・持病・妊娠など、様々な要因により歯周病になりやすくなります。一つ一つの要因について、詳しく見ていきましょう。

喫煙習慣のある人

喫煙者は非喫煙者と比較して、歯周病のリスクが高くなります。喫煙者が歯周病にかかるリスクは、1日10本以上の喫煙により5.4倍、10年以上の喫煙習慣で4.3倍にまで上昇すると言われています。

喫煙習慣がある方が歯周病になりやすい理由は、タバコに含まれるニコチンにより細菌と戦う白血球の機能が低下することです。体の免疫力が低下し、歯周病菌に対抗する力が弱くなります。また、ニコチンは血管を収縮させるため、十分な酸素を歯ぐきに供給できなくなります。歯周病菌は低酸素でも繁殖できる一方で、それと戦う体の組織は酸欠状態では対抗力として十分には機能できません。結果、歯周病菌が繁殖しやすくなります。

さらに、タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビンと結びつきやすくなっています。そのため、血流の低下と合わせて、一酸化炭素も体内の酸素供給を妨げます。また、歯周病の人が歯磨きをすると歯ぐきから血が出ることがあり、これによって歯周病かどうか判別できます。しかし喫煙者はニコチンによる血管収縮が原因で、歯ぐきの炎症や出血が少なくなるため、歯周病の発見が遅れやすく、結果的に治療に時間がかかることが多くなります。

歯並びが悪い人

歯周病の原因のひとつが、歯の間や歯ぐきとの境目に溜まる歯垢です。歯並びが悪い方はブラッシングがしにくいため、磨き残しが出てしまい歯垢が溜まりやすくなります。

歯垢は長時間放置されると、唾液の成分であるカルシウムやリン酸と混ざり、歯石に変化します。歯石は、歯ブラシでは除去することができず、表面がザラザラしているためその隙間に新たな歯垢が溜まりやすくなることから、歯周病菌がより繁殖しやすい状態になります。そのため、歯周病予防のためには歯垢や歯石の除去が必要です。

歯並びは、歯が生えそろうときだけでなく、年齢を重ねるに連れても悪くなります。親知らずの抜歯、歯ぎしり、毎日の咀嚼、そして歯周病が主な原因です。
歯並びの種類や悪くなる原因、歯並びが悪いことによるリスクなど歯並びについて、下記の記事で解説しています。

過度にストレスを抱えている人

過度なストレスが続くと自律神経のバランスが崩れ、免疫力が低下します。免疫力が低下すると、歯周病菌が産生する毒素の影響を受けやすくなります。また、ストレスのある生活では交感神経が強く働き、唾液の分泌量が低下します。さらに、ストレスは唾液の量だけでなく質にも影響し唾液の粘り気が強くなります。

加えて、歯周病は症状が進行すると「歯肉溝滲出液」というネバネバした物質を作り出し、唾液がさらにネバネバしてしまう原因となります。ネバネバした唾液は、サラサラな唾液と比べ洗浄作用が低くなります。これによって口内を清潔に保つことが困難になり、歯周病菌が繁殖しやすくなってしまいます。

さらに、ストレスが原因で歯ぎしりや食いしばりが日常的になる方もいます。歯ぎしりや食いしばりによって歯の位置がずれ、歯磨きの際、磨き残してしまう部分が増えることから歯周病を発症しやすいと言われています。

糖尿病を発症している人

糖尿病は、血中の糖を分解できなくなることで高血糖が慢性的に続く病気です。歯周病は糖尿病の第6の合併症とも言われます。糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較して歯周病の発症率が2.6倍高いというデータがあります。

高血糖状態が続くと、血管がもろくなり免疫力が低下して歯周病のリスクが増加します。また、細い血管への血液の流れが阻害されるため白血球の機能が低下し、歯周病菌に感染しやすくなります。

高血糖になると浸透圧の影響で頻尿になるため、体内の水分が枯渇します。これにより、歯周病の予防効果がある唾液の分泌量も低下してしまいます。また高血糖状態では、唾液中の糖分濃度も上昇するため、歯周病菌の増殖を促します。

また歯周病菌は糖尿病を進行させるという悪循環を生みます。歯周病菌が歯ぐきへと侵入すると、対抗措置として炎症物質が分泌されます。この炎症物質は全身を巡って血中にある糖の分解を阻害します。

口を開ける癖がある人

普段から口呼吸が癖になっていたり、口を開ける習慣がついていたりすると、口内が乾燥しやすくなります。唾液には様々な働きがあり、歯周病菌をはじめとする細菌から口内を保護したり、細菌を洗い流したりする役割を果たしています。しかし、口内が乾燥すると、その働きが低下し、歯周病菌が繁殖しやすい状態となります。

歯ぎしりの習慣がある人

歯ぎしりで歯が削れたところに歯垢が付着しやすくなり、ブラッシングの際、磨き残しが多くなります。その結果、歯周病の発症を招いたり悪化させたりするおそれが高まります。

歯ぎしりには、噛み合わせた状態から横にスライドさせるグライディング、上下の歯を食いしばるクレンチング、上下の歯をカチカチと音を立てるタッピングの3種類があります。特にグライディングが歯や歯の周辺組織に多大な影響を与えます。歯ぎしりは疲れているときやストレスを抱えているときに起こりやすいですが、就寝時に発生しやすいため、自身では気づかないこともあります。
歯ぎしりについて下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

骨粗しょう症の人

骨が弱くなる骨粗しょう症になると、歯を支える骨ももろくなります。そのため、骨を溶かす歯周病が進行しやすくなります。また、女性ホルモンのエストロゲン不足が原因の骨粗しょう症の場合、歯周ポケット内で炎症を引き起こす物質が作られるため、歯周病が悪化しやすくなると考えられています。

妊娠している人

妊娠中の女性は妊娠性歯肉炎になることがあります。妊娠性歯肉炎は、妊娠によるホルモンバランスの変動が影響して、歯ぐきが腫れたり出血したりする歯肉炎です。

妊娠すると、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンが過剰に分泌されます。特にエストロゲンを好物とする細菌が口内で増殖して妊娠性歯肉炎を引き起こします。また、つわりの時期には、歯磨きができないほどの吐き気に襲われ、歯肉炎を発症しやすくなります。妊娠による女性ホルモンの影響や心理的なストレスから、唾液の分泌量が減少して口内が乾燥することも、妊娠性歯肉炎の原因となります。

妊娠性歯肉炎を放置すると、歯周病に進行してしまうこともあります。妊娠時の歯周病は、早産や低体重出産の原因となるおそれもあるため、妊娠中の歯周病検査が推奨されています。自治体によっては母子手帳を提示することで助成されることがあるため、調べてみましょう。

生理期間の女性

妊娠中だけでなく、生理の期間も女性ホルモンの分泌が活発に行われます。そのため、女性ホルモンを好む歯周病菌の影響で、歯周病の初期段階である歯肉炎が引き起こされます。男性よりも女性の方が歯周病にかかりやすいと言われるのはそのためです。特に生理前は女性ホルモンの変動が激しく、歯ぐきが腫れやすくなります。

生理前の歯ぐきに関する症例については以下の記事も参考にしてみてください。

歯周病になりやすいかどうかは遺伝的要素もある

口内ケアを欠かさず行っているにもかかわらず歯周病を発症する人もいれば、口内ケアが不足していても歯周病にならない人もいます。

これらの違いは遺伝的要素も関係しています。前提として歯周病自体は、遺伝することがありません。これは歯周病が、歯周病菌の感染により発症する感染症であるためです。ただし、歯周病のなりやすさには遺伝的要素が関連していることがわかってきています。つまり、歯周病菌に感染したときに症状が強く出やすい遺伝子タイプの方もいれば、歯周病に弱い抵抗力を持つタイプの方も存在します。また、歯並びも遺伝的要素が関係していることがあります。

ただし、これらの遺伝的要素は歯周病の原因の一部に過ぎません。普段からの口内ケアや生活習慣によって、歯周病は予防できます。

歯周病になりやすい人に効果的な予防法

これまでにご紹介したような歯周病にかかりやすい特徴が自身に当てはまる方もいるかもしれません。しかし、これらの特徴や生活習慣を改善することで歯周病を効果的に予防できます。

例えば、歯並びが悪い方は、歯並びを矯正することで解決できます。歯並びが改善されると、歯と歯の隙間に溜まった歯垢も除去しやすくなります。また、歯ぎしりが多い方は、夜間に装着するマウスピース(ナイトガード)の使用を推奨します。歯ぎしりは特に夜間に無自覚で行われることが多いので、マウスピースにより歯や歯ぐきの損傷を防げます。

以下に、歯周病になりやすい代表的な生活習慣の改善方法を記載しています。日頃の適切なブラッシングや歯間ケアと合わせて取り組むことで、歯周病を予防しましょう。

禁煙する

喫煙者は禁煙することで、従来の免疫力が戻り、歯周病の発症リスクを下げることができます。禁煙することで、歯ぐきの血流量が改善し、歯周病の原因菌の繁殖を抑えられます。
また、歯ぐきの色が改善されることにより、歯周病を発症した際、発見しやすくなります。すでに歯周病を発症している場合でも、禁煙により治療効果が高まることがわかっています。

禁煙は自力でも達成できますが、習慣化しているとなかなか止めるのは難しいものです。ニコチンパッチなどの薬の使用や禁煙治療アプリ、禁煙外来の利用など、医療に頼るのも効果的です。

ストレスを発散する

ストレスが溜まると唾液量が減少します。 すると唾液の中に含まれる免疫物質も減ってしまい、歯周病への抵抗力が落ちます。したがって日常的にストレスを抱えている方は、ストレスを発散することが大切です。休息や趣味などでストレスを緩和して副交感神経を刺激することで、自律神経のバランスが整い、免疫力を高めることができます。

口内の乾燥を感じる場合には、キシリトールガムを噛むのも効果的です。噛む刺激が唾液の分泌を促進させ、口内環境の改善ができます。

口呼吸を改善する

口呼吸をする方は口内が乾燥しやすくなるため、鼻呼吸をするようにしましょう。また、鼻呼吸は歯並びの悪化を防ぐメリットもあります。鼻呼吸の実践は日頃から意識的に行う必要があります。

さらに、口の筋肉を鍛えたり、睡眠前に口にテープを貼ったりするのも効果的です。また、舌の位置を改善することも大切です。舌が下顎についていると口が開きやすくなってしまいます。舌を正しい位置にするトレーニング方法については、下記の記事をご覧ください。

まとめ:歯周病の予防に、生活習慣を見直しましょう

歯周病のなりやすさには、日頃の口内ケアだけでなく、生活習慣や歯並び、唾液の質・量、遺伝的要素などが関係しています。遺伝的要素を改善することは難しいですが、日頃の適切な口内ケアと生活習慣の改善で歯周病を予防できます。歯周病になりやすい生活習慣や食習慣が無いかを見直してみましょう。

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