噛み合わせはなぜ重要? 悪いと出る症状や主な原因・治す方法を解説

噛み合わせはなぜ重要? 悪いと出る症状や主な原因・治す方法を解説

この記事では、歯の噛み合わせが悪いと出る症状や噛み合わせが悪くなる原因、噛み合わせを治す方法などについてわかりやすく解説します。

               
噛み合わせとは上下の歯の接触状態のことで、噛み合わせが悪いと歯周病やむし歯などの健康上のリスクを高めます。逆に嚙み合わせが良いことで、運動パフォーマンスが向上したり歯磨きがしやすくなったりと良い影響もあります。

噛み合わせはなぜ重要? よいと起きること

長い間噛み合わせが悪い状態が続くと、歯周病やむし歯、肩こりなどの健康上の問題につながり、生活の質を下げる原因になります。逆に言えば、噛み合わせを改善することで健康状態をよくすることができます。

例えば、歯並びが整った噛み合わせのよい歯は歯や顎にかかる負担が均等に分散できます。これにより、輪郭および身体の左右バランスが均等に保て、噛み合わせが原因とされる片頭痛や肩こり、顎関節症も起こりにくいです。

また、噛み合わせがよいと、食べ物をよく噛めて唾液の分泌が促されるため、消化器官の負担軽減にも貢献します。さらに整った歯並びは歯磨きがしやすく、むし歯や歯周病のリスクを減らせます。

噛み合わせは運動パフォーマンスにも大きく影響します。一説では、筋力4~6 %向上するともいわれています。そのため、スポーツ選手は噛み合わせを良くする方も多いです。
<嚙み合わせと運動パフォーマンスの関係については、こちらの記事を参考にしてみてください。>

噛み合わせの悪さが影響すること

前述したように噛み合わせの悪さは、さまざまな健康上のリスクにつながるおそれがあります。噛み合わせが悪いことで起こりうる主な症状は以下のとおりです。

歯周病

噛み合わせが悪いと歯磨きがしにくく、きちんと磨かないと歯並びがガタガタな部分に細菌がたまります。この細菌が歯垢として蓄積されると、歯周病のリスクが高まります。歯周病は歯ぐきの炎症や出血を引き起こし、進行すると歯を支える骨が破壊され、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

むし歯

噛み合わせが悪いせいで歯磨きがしにくくなることは、むし歯の発生にもつながります。また、噛み合わせが悪いと一部の歯に過剰な力がかかり、歯の表面のエナメル質が傷つくことも問題です。エナメル質が傷つくと歯の本体である象牙質が露出し、むし歯になりやすくなります。

さらに噛み合わせが悪いと口呼吸になるため、口内が乾燥しやすくなり、唾液による自浄作用が低下してむし歯のリスクが高まります。

顎関節症

顎関節症は、顎関節や顎を動かす筋肉に異常が生じる病気です。噛み合わせが悪いと、全体の歯が均一に接触しない状態が続くため顎関節の前後左右にかかる力が不均等になって筋肉のバランスも崩れます。このため、顎関節に過剰な負担がかかって顎関節症になります。

顎関節症になると顎関節の筋肉の動きが左右対称にならず、食事や会話をする際に不快感や痛みが生じやすくなり、日常生活に支障をきたすおそれがあります。

片頭痛・肩こり

噛み合わせが悪いと、上下の歯が適切に接していないことから違和感を覚えて無意識のうちに歯ぎしりや歯を強く噛みしめるといった習慣(パラファンクション)が生じやすくなります。この悪習慣が続くと頭部や首、肩の筋肉に過度な緊張をもたらし、片頭痛や肩こりの原因になるおそれがあります。また、顔の輪郭や姿勢にも悪影響を与えます。

良い噛み合わせの特徴

では、よい噛み合わせとは具体的にどのような状態なのでしょうか。適切な噛み合わせの特徴について解説します。

上下の正中線が一致している

適切な噛み合わせの第1条件は、上下の歯を噛み合わせたときに上前歯2本の間の線と下前歯2本の間の線を結ぶ「正中線」が一致していることです。正中線がずれていると、顎の左右のバランスが崩れ、顎関節や咀嚼筋に負担がかかります。

逆に、顎の左右のバランスが崩れることでも正中線がずれることもあり、両者は相互に影響し合う関係にあります。この正中線のずれは、歯の生え方や歯の大きさ、歯の早期喪失、不正な歯の抜去などが原因で起こることが多いです。

オーバージェット・オーバーバイトが適切

オーバージェットとは、上の前歯が下の前歯よりも前に出ている度合いのことです。一方オーバーバイトは、上の前歯が下の前歯にかぶさっている度合いのことを言います。一般的にオーバージェットとオーバーバイトはともに2~4 mmが適正範囲とされ、適正範囲よりも距離が離れるほど、噛み合わせが悪い状態にある、という物差しになります。

例えば、オーバージェットの適正範囲を超えて上の前歯が下の前歯よりも前に出るほど「出っ歯」になります。そしてオーバーバイトの適正範囲を超えて下の歯が上の歯よりも前に出るほど「受け口」や「しゃくれ」と呼ばれる状態になります。このようにオーバージェット、オーバーバイトともに適正範囲を超えると、咬合面の接触が不十分になり、咀嚼機能が低下します。

自然に口を閉じられる

噛み合わせが適切な状態だと、無理なく自然に口を閉じることができます。しかし、噛み合わせが悪い場合、口を閉じるときに歯同士が干渉し合い、顎の動きが制限されるため、無理な力が歯や顎関節にかかってしまいます。

このように、口を閉じるための顎の動きが妨げられるため、無理な力が加わり自然に口を閉じられません。前述したように、口が開いた状態では口内が乾燥しやすくなるので、むし歯のリスクが高まります。

噛み合わせが悪くなる主な原因

噛み合わせが悪くなる主な原因として以下の5つが挙げられます。

1.口呼吸(子どもに多い)

口呼吸とは鼻ではなく口を通じて呼吸することで、子どもに多く見られます。口呼吸は習慣化すると、舌の位置が下がり、口内の筋肉バランスが崩れます。特に成長期に鼻呼吸をしない状態が続くと、顔の形が縦に長くなり、顎の後退や上顎の突出といった噛み合わせに悪影響を及ぼします。

子どもが口呼吸になりやすい主な原因は、鼻詰まりや鼻炎などを理由に鼻呼吸がしづらくなっていることです。そのため、子どもの噛み合わせの悪さが鼻詰まりによる場合には、まず鼻詰まりや鼻炎を治療することが重要です。鼻の通りが改善された後、意識的に鼻呼吸を促すことで噛み合わせの改善が期待できます。改善が期待できます。

また、舌や口周りの筋肉が弱いことも口呼吸の原因になります。子どもの口周りの筋肉を鍛えるには、発達に合わせて硬いものをよく噛んで食べる習慣をつけさせることが重要です。加えて、口呼吸により舌の位置が低くなっている場合には、舌の位置を正常に戻すためのマウスピースを装着したり、口周りの筋肉を鍛える体操を生活に取り入れたりするとよいでしょう。

さらに、猫背も口呼吸を引き起こす原因のひとつです。猫背の姿勢では胸で浅く呼吸することしかできないため、多くの空気を取り込める口呼吸を無意識で取り入れてしまいます。猫背を改善するには常に背筋を伸ばした姿勢を意識させ、外遊びで筋肉を鍛えるなど、姿勢改善に取り組むことが必要です。

2.片噛み

片噛みとは、食事の際に片側の歯だけで噛む習慣のことです。片噛みは単なる癖の方もいますが、むし歯があるなどの理由からむし歯のない片側の歯で噛む方もいます。片噛みが続くと、片側の歯や顎にだけ負担がかかるので、噛み合わせの不均一や顔つきの非対称を引き起こすおそれがあるため注意が必要です。

片噛みを改善するには、意識して歯の両側で均等に噛む習慣をつけることが求められます。また、むし歯などが原因で片噛みをしている場合には、歯科医院を受診して治療を行いましょう。

3.歯ぎしり・食いしばり(大人に多い)

歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに歯を強く噛みしめる習慣です。特に大人に多く、睡眠中に行われるケースがほとんどです。歯ぎしりや食いしばりの原因ははっきりわかっていませんが、ストレスや緊張、歯並びなどが原因で起こると言われています。

歯ぎしりや食いしばりが続くと、歯の位置がずれたり、噛み合わせが悪くなったりするだけでなく、歯に強い負担がかかり続けることで、歯が欠ける、歯の詰め物が破損することもあります。

歯ぎしりや食いしばりの改善には、マウスピース(ナイトガード)の装着が有効です。また、根本の原因であるストレスや緊張を軽減するために、リラックスできる時間を増やしたり、生活習慣を見直したりすることもおすすめです。

4.舌突出癖

舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)とは、無意識に舌を前に突き出す癖のことです。本来、舌の正しい位置は、舌の先端が上の前歯の裏側の歯ぐきの少し窪んだ部分(スポット)に軽く触れており、舌全体が上顎に吸い付くように密着している状態です。しかし、舌突出癖になると日ごろから舌で前歯を押しているため、前歯が前方に傾斜し、開咬や上顎前突といった噛み合わせの悪い歯になるおそれがあります。

舌突出癖を改善するには、MFTという筋機能訓練の実施や矯正装置の使用が有効です。

5.指しゃぶり(子どもの場合)

指しゃぶりの習慣も噛み合わせの悪い歯の原因になります。指しゃぶりが長く続くと、歯や顎に持続的な圧力がかかり、歯列の位置や形状が変わってしまうことがあります。特に上の前歯が前方に傾斜し、下の前歯が後方に傾斜するケースが多いです。

一般的には、5歳頃までに指しゃぶりをやめられれば、歯列は自然に修正されていくと言われています。しかし、その年頃になっても子どもが指しゃぶりをしている場合には、親が指しゃぶりをやめるように促しましょう。具体的には指しゃぶりの危険性を子どもに説明したり、子どもの指にばんそうこうや塗り薬を塗布したりする方法などがあります。

噛み合わせを治す方法

噛み合わせは、歯科医院での矯正治療はもちろんのこと、生活習慣を見直すことでも改善が期待できます。

矯正治療で噛み合わせを整える

噛み合わせは矯正治療で整えることが可能です。矯正治療には主にワイヤー矯正とマウスピース矯正の2種類があります。

ワイヤー矯正は、歯にブラケットを装着し、ブラケットにワイヤーを通すことで徐々に歯の位置を調整する矯正法です。ほとんどの歯に対応可能で、細かい調整をしやすいのがメリットですが、矯正器具が目立つ、食事がしづらいなどのデメリットもあります。

一方のマウスピース矯正は、定期的に新しいマウスピースに交換することで少しずつ歯を動かす矯正法です。ワイヤー矯正に比べて矯正装置が目立ちにくく、アレルギーの心配がないのが特徴です。ただし、マウスピース矯正は歯の位置を大きく変える場合には向いておらず、装着時間をしっかり自分で管理しなければなりません。

矯正治療を始めるタイミングは、大人なら歯と歯槽骨が健康な状態であればいつでも始められます。特に前歯の位置のずれや歯列不正などの改善を望む場合が治療開始の適切なタイミングとなります。加えて、歯周病の治療後に歯の位置を整えたい場合や、歯の欠損による咬合の崩れを治したい場合なども、矯正治療を検討するよいタイミングと言えます。一方、子どもの場合には、永久歯が生えてくる6〜8歳頃がベストとされています。

生活習慣を改善する

噛み合わせを改善するためには、生活習慣の見直しも必要です。前述したように、噛み合わせの悪化は口呼吸や片噛み、歯ぎしり・食いしばりなど、日ごろの習慣が大きく関係しています。そのため、矯正治療を行う場合でも、生活習慣の見直しは欠かせません。

例えば、片噛みであれば、まずは自分の癖を認識し、意識して左右の奥歯を均等に使って噛むことを習慣づけましょう。また、子どもが口呼吸や指しゃぶりをしていたら、家族で注意したり、一緒に呼吸法や指遊びなどをして興味をそらしたりすることが重要です。

ただし、生活習慣の改善は一朝一夕では行えず、時間がかかります。それでも家族や友人に協力を求めたり、歯科医院で相談したりしながら、少しずつ改善することが大切です。

日本には矯正専門の歯科医師や、噛み合わせの認定医、指導医がいるので、噛み合わせに悩んでいる方はこのような専門医に相談してみるとよいでしょう。

適切な処置で噛み合わせを改善しよう!

噛み合わせの悪さは、歯周病やむし歯、顎関節症、片頭痛や肩こりなど、多くの健康問題を引き起こします。悪い噛み合わせは、適切な矯正治療や生活習慣の改善を通じて治すことが可能です。自分の噛み合わせが気になる方は、一度歯科医院に相談してみましょう。

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