スポーツのパフォーマンスには、噛み合わせが大きく影響します。しっかり噛みしめることで体のバランスが安定し、高いパフォーマンスを発揮できるためです。本記事では噛む力がスポーツに与える影響や、噛み合わせが悪化する原因などを解説します。歯を守って正しい噛み合わせを維持する秘訣を、ぜひチェックしてくださいね。
スポーツのパフォーマンスと噛み合わせの関係
噛み合わせは、スポーツのパフォーマンスに深く関係しています。まずは噛む力がもたらす効果や、さまざまな競技で噛む力が必要になる場面を解説します。
噛む力によって筋力が4~6%アップ
近年、プロスポーツ選手の協力のもと、噛む力に関する研究が進んでいます。これにより、噛む力とスポーツとの密接な関係が明らかになってきました。噛むことで大脳にある咀嚼運動野(そしゃくうんどうや)を活性化し、全身の筋力アップにつながることが分かってきたのです。
一説には、歯を噛みしめると筋力が4~6%もアップすると言われています。トップ選手の場合、たった1%の筋力アップにも並々ならぬ努力が必要なことから、これは非常に注目すべきことだと言えます。ほとんどの競技で筋力アップがパフォーマンス向上につながるため、噛む力が注目されています。
噛む力が重要になる場面【競技別】
噛む力が活きる場面は、競技によって異なります。例えばウエイトリフティングなどのパワー系種目では、力を込めるときにしっかり噛みしめることで最大パフォーマンスを発揮できます。陸上などのスピード系競技ではスタート直後、地面を強く蹴って加速する際にしっかり噛みしめれば、体のブレを防げます。
野球で噛む力が活きるのは、バットに球を当てる瞬間です。サッカーではシュート時、バレーではスパイク時など、強い動作をする際にしっかりと噛んで体のバランスを安定させることで、より高い瞬発力を発揮できます。
ボクシングの場合は、衝撃時にグッとマウスピースを噛むことで脳震盪などの予防効果があると言われています。これは、噛みしめることで首の筋肉が固定され、頭の揺れをある程度防ぐことができるためと考えられています。
スポーツをする人にとって重要な噛み合わせ
瞬発力の発揮やケガ防止など、しっかり噛むことで得られるメリットはたくさんあります。そのためスポーツ界では、フィジカルトレーニングに加えて、咬合力(こうごうりょく:噛む力)トレーニングの必要性が注目されています。
噛む力を高めるには、大前提として正しい噛み合わせが欠かせません。噛み合わせを維持するには日々のオーラルケアや、ケガを防止するマウスガードやフェイスガードの使用が有効です。全身のバランスを保って最大のパフォーマンスを発揮するには、良い噛み合わせを保つことが大切と言えるでしょう。
噛み合わせが悪化する原因
噛み合わせのバランスは、ちょっとしたことで崩れがちです。清涼飲料水の大量摂取や外傷などでも、噛み合わせが悪化するリスクを伴います。他にもむし歯や咀嚼のバランスなど、噛み合わせが悪化する原因を解説します。
むし歯
むし歯ができると痛みが出るので、その歯を避けて噛むようになります。同じところで噛むために咀嚼のバランスが悪くなり、噛み合わせが悪くなってしまうのです。噛み合わせが悪くなると顎を動かしにくくなり、頭部が傾いて重心がゆがみ、体のバランスが不安定な状態になります。その状態が続くと力を発揮しにくく、スポーツをする上でも支障をきたしてしまいます。
<SillHa.com編集部より>
むし歯は早期発見、早期治療が大切です。
初期むし歯の特徴について、こちらの記事にまとめています。
口内環境の乱れ
スポーツをする時にはスポーツドリンクやエネルギーバーなどの食品を摂る機会が多いかと思います。実は、これらもむし歯リスクを高める要因の1つです。スポーツドリンクはクエン酸やアミノ酸を含むため口内環境を酸性に傾ける傾向があり、歯の摩耗にも影響を与える可能性があります。さらに運動に伴う唾液成分の変化などにより、口腔疾患のリスクがさらに増加することも考えられます。
外傷
口や顎のケガにより、噛み合わせがずれる場合があります。目に見える傷が治っても、噛み合わせに違和感がある、口を開閉しづらいなどの症状があれば歯科医師に相談をしてください。噛み合わせの治療が必要かを診てもらいましょう。
運動などの長期的習慣の影響
習慣的・長期的にスポーツを行っている人は、競技によっては左右のどちらかに負担がかかることで顎がずれ、噛み合わせに影響が出る場合があります。例えばサッカーや野球など、常に同じ腕や足で行うスポーツには注意が必要です。練習後には反対の腕や足を意識的に動かして、バランスを保つようにしましょう。
正しい噛み合わせを保つポイント
正しい噛み合わせを保つポイントは、歯科での定期検診を受けることや、生活習慣の見直しなどが挙げられます。 競技によっては、マウスガードなどを使って外傷から身を守ることも大切です。正しい噛み合わせを維持できればパフォーマンス向上につながるだけでなく、唾液がたくさん分泌されるのでむし歯予防や口内環境を保つ助けとなります。以下のポイントを守り、いつまでも正しい噛み合わせを保ちましょう。
歯科医院で定期検診を受ける
定期的に歯科医院で噛み合わせや口内環境をチェックしてもらいましょう。定期検診を受けていれば、自覚症状のないむし歯や歯周病の早期発見にもつながる上、相談すれば、噛み合わせの治療も受けられます。噛み合わせの治療には、摩耗してすり減った歯を人工物で覆う補綴(ほてつ)や、歯列の全体的な調整が行われます。
もともとの噛み合わせが悪い場合は、歯列矯正が必要な場合もあるでしょう。歯科医がその人に合った噛み合わせの治療を提案してくれるので、相談してみましょう。
唾液検査シルハで口内環境をチェックする
歯科検診を受ける際、一緒に唾液検査シルハを受けるのがおすすめです。自分の口内環境を客観的なデータで把握できれば、むし歯や歯周病予防にもつなげられます。シルハは全国1,500以上の医療機関で導入されているので、こちらからチェックしてくださいね。
日常生活における姿勢や筋肉の偏りを見直す
日常の習慣も噛み合わせに影響を及ぼします。例えば食事の際に同じ席にばかり座ると、会話する相手やテレビを見る方向が固定され、片側だけで噛むが習慣がつきやすくなります。また寝るときの姿勢も重要です。横向きで寝ると、筋肉の偏りに影響します。座る位置や寝る姿勢を1日ごとに変えるなどの取り組みや、両側で噛むように意識することが大切です。
スポーツ時はマウスガードなどを活用する
スポーツを行う際、競技に応じてマウスガードやフェイスガードによる保護をしましょう。また歯科疾患やスポーツによる外傷や障害が生じた時は、迅速な対応が求められます。心配なことがあればすぐに歯科を受診してくださいね。
スポーツにも重要な、噛む力の鍛え方
噛む力は自分で鍛えられます。歯ごたえのある食材を積極的に食事に取り入れたり、トレーニングをしたりして噛む力を鍛えましょう。
歯ごたえのある食材やガムを噛む
食事の際は、意識的に噛む回数を増やしましょう。ガムを噛むのも良い習慣です。キシリトール配合ガムを選べば、むし歯予防にもなり一石二鳥ですよ。噛みごたえのある食材や、しっかり噛まないと飲み込めないものを食事に取り入れると、自然と噛む回数が増えます。自宅での献立作りや外食時のメニュー選びの際、以下の食材を意識して選んでくださいね。
- 野菜:れんこん・ごぼう・たけのこなど
- 果物:りんご・かきなど
- 魚介類:いか・たこ・貝類など
- 肉類:かたまり肉
- 主食:玄米、全粒粉のパン・ベーグル
- 調理を工夫して噛み応えを出す
さらに一工夫するなら、煮込み料理の野菜を大きめに切ったり、加熱時間を短くしたりして歯ごたえを出しましょう。また、りんごやかぼちゃなどを皮を剥かずに付きのままで食べることもおすすめです。
側頭筋を鍛えるトレーニングをする
口を大きく開けたときに動く、こめかみ付近の筋肉を側頭筋(そくとうきん)と呼びます。ここを鍛えると、顎の関節がスムーズに動いて噛む力がつきます。ぜひこのトレーニングを行ってみてくださいね。
<手順>
- 1.背筋を伸ばしてまっすぐ正面を見つめる
- 2.軽く顔を上げて、奥歯を噛みしめる(5秒間)
- 3.5秒間かけて力を抜き、最初の状態へ戻る
- 上記の手順を4セット行う
噛み合わせを定期検診でチェックし、食事で噛む力を鍛えよう
今以上にスポーツで力を発揮したいなら、ぜひ噛む力に注目してみてください。自分の噛み合わせに不安がある場合は、1度歯科医院でチェックしてもらうと良いでしょう。正しい噛み合わせは、歯や口内環境を保つことにも役立ちます。噛み合わせを維持するために食事内容を見直したり、噛む力のトレーニングも取り入れたりしてくださいね。