永久歯がまっすぐに生えない理由は?トラブルや対処法を解説

永久歯がまっすぐに生えない理由は?トラブルや対処法を解説

この記事では、永久歯がまっすぐに生えない原因やその背景にあるリスク、対処法まで解説します。

               
子どもの永久歯が斜めに生えてきたり、なかなか生えてこなかったりすると、「このままで大丈夫なの?」「歯並びに問題はない?」と不安になる保護者の方も多いのではないでしょうか。

永久歯の生え方には個人差があり、一見問題に見えても成長とともに自然に整うケースは少なくありません。しかし、なかには顎の大きさや生活習慣、癖などが影響して歯並びや噛み合わせに影響を及ぼすこともあります。

永久歯が正しい向きに生えない理由

永久歯の生え方には個人差があるため、必ずしもまっすぐ生えてこないからといってすぐに問題があるとは限りません。しかし、その背後には骨格や癖、成長のタイミングなど複数の要因が関わっていることがあります。

ここでは、永久歯がまっすぐに生えない代表的な原因について解説します。

乳歯が早く抜けた

永久歯は、先に生えている乳歯をガイド役のようにして、乳歯の根元を少しづつ吸収しながら生えてきます。
そのため、乳歯が早く抜けてしまった場合は目印がなくなり、歯列から外れた位置に永久歯が「萌出(ほうしゅつ:歯が生えること)」したり、歯が重なって生えてしまう「叢生(そうせい)」などが発生することがあります。

また、早くに乳歯が抜けてしまい、永久歯がなかなか生えてこない場合、そのスペースに隣接する歯が倒れ込んだり、寄ってきたりする「スペースロス」が起こることがあります。
スペースロスが起こると、永久歯が生えるための十分なスペースがなく、曲がって生えてきたり、叢生が起きることがあります。

永久歯は乳歯の脱落とほぼ同時に生えてくることもありますが、人によっては1年ほど遅れてようやく萌出する場合もあり、その間、前歯がしばらくない状態が続くこともあります。
さらに、乳歯に重度のむし歯や外傷があった場合には、後続の永久歯の成長や生えるタイミングに影響を及ぼし、さらに遅れが出ることもあります。
また、乳歯が早く抜けたのに永久歯がなかなか生えてこない場合は、顎の成長が追いついていない場合もあります。

ただし、生え始めの前歯は、上顎では正中にすき間が空いていたり、下顎では歯並びが不揃いに見えることもあります。これらは一時的なもので、成長とともに自然に整うケースが多いです。
心配な場合には、歯科医院に相談したうえで、経過を観察することが大切です。

顎の骨が小さく永久歯が生えるスペースが足りない

永久歯は、乳歯の根の下にあらかじめスタンバイしており、成長とともに少しずつ上へと移動しながら、乳歯を押し上げて自然に生え変わります。このプロセスがスムーズに行われるためには、永久歯が並ぶための十分なスペースが顎の骨(歯槽骨)に確保されていることが前提です。

しかし、顎の骨が小さい人の場合、このスペースが物理的に不足しています。ここで言う「顎の骨が小さい」とは、上下の歯列が並ぶ歯槽骨という弓状の骨の長さや幅が、永久歯の本数とサイズに対して足りていない状態を指します。たとえば、成人の永久歯は親知らずを除いて28本あり、歯と歯の間にはわずかな隙間(歯間)が必要ですが、顎のアーチが狭いとこれらがきちんと並びきれません。

その結果、永久歯が生える位置を確保できずに、前後にずれたり、斜めに生えてきたり、最悪の場合は骨の中に埋もれて出てこられないこともあります。

生えてきた永久歯が曲がるケースもある

永久歯は通常、乳歯の生え替わりとともに自然に正しい位置へと萌出してきますが、生えてきた永久歯が傾いていたり、ねじれて(捻転して)いる状態で出てくることも珍しくありません。こうしたケースでは、もともとの顎の骨のスペース不足や歯列の狭さに加え、日常的な癖や口腔周囲の筋機能のアンバランスが影響していることがあります。

たとえば、舌で前歯を押すような癖(舌突出癖)や、食べ物を飲み込む際に上下の前歯の間に舌を突き出すような動きがある場合、本来まっすぐ生えるはずだった永久歯が前方に押され、傾いて生えたり、上下の前歯の間に不自然な隙間ができる「開咬(かいこう、前歯が噛み合わず口が閉じにくい状態)」という噛み合わせの異常を引き起こすことがあります。

永久歯がまっすぐに生えない・生えてから曲がることの問題点

永久歯の生え方は見た目だけでなく、日常生活にも大きな影響を及ぼすことがあります。ここでは、永久歯がまっすぐに生えない・生えてから曲がることによって起こり得るトラブルについて解説します。

発音に支障をきたす

歯並びが乱れて前歯が斜めに生えていると、言葉を発するときに空気が意図しない方向へ漏れやすくなります。特にサ行やタ行の発音が不明瞭になりやすく、話し声がこもったり、聞き取りにくくなったりすることがあります。こうした状態が続くと、本人が発音に自信を持てず、人との会話や発表の場面で消極的になってしまうこともあります。

よく噛めない

上下の歯が正しく噛み合わないと、食べ物を前歯でかじるのが難しくなります。特に硬いものや繊維質の食材は噛み切りにくく、咀嚼にストレスを感じます。うまく噛めないことで、顔を傾けて食べたり、奥歯ばかりを使ったりする癖がつくと、姿勢の歪みや顎への負担にもつながるおそれがあります。

むし歯や歯周病のリスクが高まる

歯が曲がって生えていると、歯と歯のすき間や重なりが多くなり、歯ブラシの毛先が届きにくい箇所が増えます。その結果、食べかすや歯垢がたまりやすくなり、むし歯や歯肉炎などのトラブルを引き起こす原因になります。

永久歯がまっすぐに生えない場合の対応方法

永久歯がまっすぐに生えない場合は、歯科医院で適切な診断と治療/アドバイスを受けることが必要です。
実際に歯科医院で行われる内容について解説します。

原因の確認と診断

最初に行うのが、歯並びが乱れている「原因の特定」です。  
歯科医師は、レントゲン撮影や口腔内の診察を通して、次のような点を確認します。
  • 顎の骨の大きさと永久歯の並ぶスペースの関係
  • 乳歯の早期脱落や遅れ
  • 永久歯の生える角度や位置(埋伏歯・過剰歯の有無など)
  • 舌の位置や口呼吸など、生活習慣との関連
原因を明らかにすることで、今後の対応方針を決定していきます。

矯正治療を受ける

歯並びやかみ合わせに不安がある場合は、早めに矯正治療を検討することが重要です。特に、顎の骨の成長が活発な子どもの時期に行う矯正は「1期治療」といいます。将来的な抜歯や大がかりな治療を避けることにもつながります。

「1期治療」とは、小児期(おもに6~12歳頃)に行う矯正治療のことを指し、永久歯がすべて生え揃う前の段階で、顎の成長誘導や歯列の土台作りを目的として行います。たとえば、拡大装置や床矯正プレートで顎を広げる治療が含まれます。

まだ柔軟性のある骨格に働きかけることで、歯がきれいに並ぶスペースを確保したり、かみ合わせのズレを調整したりすることが可能です。

永久歯がすべて生え揃った後には「2期治療」として本格的な矯正(全体的なワイヤー矯正やマウスピース矯正)を行うこともありますが、1期治療を適切に行うことで、2期治療の必要がなくなったり、治療期間が短縮されることもあります。

なお、矯正治療は成長期が最も効果的とはいえ、大人になってからでも治療は可能です。近年では、中高年層でも見た目や機能改善を目的に治療を始める方が増えています。

ただし、成長が止まっている分、歯の移動がゆっくりで治療期間が長くなる傾向にあるほか、むし歯や歯周病の有無、既存の治療状態によっては装置や治療内容に制限が生じる場合もあります。

いずれの場合でも、まずは矯正歯科で相談を受け、自分の歯並びやかみ合わせの状態を知ることが大切です。

悪癖の改善を目指す

歯並びや噛み合わせの乱れには、顎のスペース不足や遺伝的要因だけでなく、咬む力(咬合力)の低下や、舌・口唇の機能不全といった「日常の癖」や「筋力の衰え」が大きく関わっていることがあります。とくに現代の子どもたちは、柔らかい食べ物中心の食生活や、しっかり咀嚼する機会の少なさから、かむ力が十分に育たない傾向があります。

こうした状態が続くと、歯や顎の発育が不十分となり、歯列不正を引き起こすリスクが高まります。

咬合力を維持・改善するには、まずは食生活の見直しが重要です。根菜や干物、ナッツなどの歯ごたえのある食品を取り入れることで自然な咀嚼のトレーニングになりますし、チューイングガムやグミゼリーなどを使った意識的な「かむ練習」も効果的です。また、食事中に左右どちらか一方だけでかむ癖がある場合は、均等に使うよう指導することも必要です。

口唇や舌の機能低下に対しては、筋肉の力を高めるトレーニングが有効です。たとえば、口唇閉鎖力(口をしっかり閉じる力)を鍛えるには、ゴムの抵抗を利用した閉口運動が用いられます。舌の力(舌圧)を向上させるには、舌圧子を使って上あごに向かって押すような等尺性収縮運動が推奨されており、一定の負荷をかけることで筋力を高めていきます。

さらに、舌や唇の可動域を広げる訓練や、発音・早口言葉・吹き戻しなどの遊びを取り入れた巧緻性トレーニングも、口腔機能全体の発達を支える方法です。

永久歯の生え方が気になったら歯科医院へ相談を

永久歯がまっすぐに生えない原因は、乳歯の早期脱落や顎のスペース不足、舌癖などの悪習慣などさまざまです。見た目だけでなく、発音や咀嚼、虫歯リスクなど機能面でも影響が出る可能性があります。

重要なのは、原因を早期に見極め、必要に応じて口腔習癖の改善や矯正治療に取り組むことです。特に顎の成長が盛んな時期に対応できれば、将来的な抜歯や複雑な治療を避けられることもあります。

お子様の永久歯の生え方や歯並びに少しでも気になる点があれば、まずは歯科医院で専門的な診断を受けることをおすすめします。口腔の健やかな発育を守るためにも、早めの相談と日常的な習慣の見直しが大切です。

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