親知らず抜歯後の痛みはいつまで? 原因・対処法・生活のポイント

親知らず抜歯後の痛みはいつまで? 原因・対処法・生活のポイント

この記事では、親知らず抜歯後の痛みの原因や対処法、セルフケアのポイント、受診の目安について解説します。

               
親知らずの抜歯は、痛みや腫れへの不安から、なかなか踏み切れない方も少なくありません。
マウスピース矯正を展開する株式会社Zenyum Japanが2022年に行った、歯に関する悩みを持つ新社会人106名に行った調査では、約3割が「親知らず」に不安を感じていると回答しています。そのうちの半数以上が「抜歯したいけれど腫れや痛みが不安」と答えており、多くの方にとって切実な悩みであることがわかります。

そこで、この記事では、親知らず抜歯後の痛みがどのくらい続くのか、長引く場合の原因や対処法、さらにセルフケアのポイントを詳しく解説します。治療後の不安を和らげ、安心して抜歯に臨むための参考にしてください。

親知らず抜歯後の痛みはいつまで続く?

親知らずの抜歯後は、一定期間痛みが続くのが一般的です。ただし、痛みの感じ方や回復のスピードには個人差があり、抜歯の難易度や年齢、体質なども影響します。痛みが日ごとに軽くなる場合は、正常な回復過程と考えてよいでしょう。以下に代表的な経過をご紹介します。

麻酔が切れた直後〜当日

麻酔が切れると、痛みが出始めるタイミングです。個人差はありますが、抜歯後2〜3時間ほどで麻酔が切れ、ズキズキとした痛みを感じる方が多いでしょう。通常、歯科医院で処方される鎮痛薬を服用することで、我慢できる程度に落ち着くケースが大半です。この日は出血も起こりやすいため、安静に過ごすことが大切です。

翌日〜3日目

この時期は痛みや腫れのピークです。とくに2日目は炎症反応により腫れや違和感が強まることがあり、口の開けにくさや違和感も出てくるかもしれません。しかし、痛み止めが効いていれば、日常生活に大きな支障は出にくいでしょう。

4日目〜1週間後

炎症のピークを過ぎ、徐々に痛みや腫れが軽減していきます。5〜7日目には「もう大丈夫」と感じる方が多くなりますが、多少の違和感が残る場合もあります。痛みが悪化しない限り、順調に回復していると考えられます。

親知らず抜歯後の痛みが通常より長引く場合の原因と対策

親知らずの抜歯後の痛みは、多くの場合1週間以内に落ち着きますが、それ以上続く場合には注意が必要です。ここでは、痛みが長引く原因とそれぞれの対策について解説します。

ドライソケット(乾燥症候群)

抜歯後にできるはずの血餅(かさぶた)がうまく形成されず、歯ぐきの骨が露出して強い痛みを引き起こす状態です。うがいのしすぎや患部を舌や指で触る、喫煙・飲酒・激しい運動などが原因となりやすく、2〜3日目からズキズキした痛みが始まり、1週間以上続くこともあります。発症を防ぐには、抜歯直後の過度な刺激を避けることが重要です。強い痛みが続く場合は、歯科医院で患部の洗浄や抗菌薬による処置を受ける必要があります。

細菌感染による炎症

抜歯後の傷口に細菌が入り込むと炎症が広がり、痛みや腫れが長引きます。発熱や膿の排出、口が開けにくいといった症状が見られることもあります。抜歯後の穴に食べかすなどが溜まって細菌が繁殖し、炎症を起こして痛みが出ることも。患部の腫れや膿の排出、38℃以上の発熱、顎の腫れ、口が開けにくいといった症状が見られます。こうした症状がある場合には、すみやかに歯科医院を受診し、抗菌薬の処方や患部の処置を受けましょう。なお、処方された薬を途中でやめたり飲み忘れたりすると感染が悪化することもあるため、用法・用量を守ることが重要です。

神経の損傷

親知らずが神経に近い位置にある場合、抜歯時に神経が傷つき、麻痺やしびれ、チクチクした痛みが数か月続くことがあります。とくに下顎の親知らずは神経のそばにあるため、リスクが高いとされます。神経損傷かどうかは自己判断できないため、まずは治療を受けた歯科医院に相談することが大切です。神経損傷の治療は、神経の回復を促す薬物療法、神経の活動を抑える星状神経節ブロックなどの神経ブロック療法、神経を物理的に刺激するレーザー療法や鍼灸・物理療法が一般的に行われます。多くは時間の経過とともに改善しますが、症状が重い場合は口腔外科での手術が検討されます。

歯の破片や骨の残留

抜歯の際に歯の一部や骨の破片が残ってしまうと、傷口を刺激して痛みや違和感の原因になります。白い塊のような破片が見える、触れると痛むといった症状が出ることもあります。小さな破片であれば自然に排出されることもありますが、1週間以上経っても痛みが続く場合は、無理に触らず、歯科医院で再度確認してもらいましょう。歯科医師の判断により、簡単な手術でその破片を取り除くこともあります。

年齢や体質、全身の健康状態による影響

高齢者や糖尿病などの持病がある方は、血流や免疫機能が低下しているため、傷の治りが遅れる傾向があります。喫煙者もタバコに含まれるニコチンが血流を妨げ、回復を遅らせる原因となります。さらに、栄養不足や過労、睡眠不足といった生活習慣も治癒を妨げる要因です。抜歯後はとくに2~3日の間、喫煙を控え、バランスの良い食事と十分な休養を心がけましょう。

難抜歯や骨を削る処置があったケース

親知らずが横向きに埋まっている「水平埋伏歯」や、歯根が複雑に曲がっている場合は、そのまま引き抜くのが難しいため、歯を分割して取り出します。その際、分割のためのスペースを確保するために周囲の歯ぐきや骨を削ることがあります。こうした処置は組織への負担が大きく、術後の痛みや腫れが長引きやすくなります。通常は日ごとに軽快しますが、1週間以上痛みが続いたり悪化したりする場合は、歯科医院で再度診察を受けましょう。

抜歯前に行うべき対策

親知らずの抜歯は、事前の準備次第で術後の痛みやトラブルを大きく減らすことができます。抜歯を控えている方は、以下のポイントを押さえておきましょう。

・炎症がある場合は抜歯を延期する
腫れや炎症がある状態での抜歯は、麻酔が効きにくくなったり、術後の腫れや痛みが強くなったりする原因になります。炎症が落ち着いてからの処置が望ましいです。

・体調を整えて臨む
前日はしっかりと睡眠をとり、当日は空腹や脱水を避けて適度に食事と水分をとりましょう。体調が悪いまま処置を受けると、治癒が遅れるリスクがあります。

・服薬や持病の有無を歯科医師に伝える
高血圧や糖尿病など持病がある場合や、服薬中の薬がある場合は必ず事前に歯科医師に申告しましょう。安全に処置を受けるために重要な情報となります。

抜歯後の適切な対応・セルフケア

抜歯後の回復は、ケアの仕方によって大きく変わります。とくに最初の数日は注意が必要です。以下に、日常生活で取り入れやすいセルフケアと注意点をまとめました。

抜歯後の食事で注意すること

抜歯直後は傷口が非常にデリケートな状態にあるため、食事にはとくに注意が必要です。麻酔が切れるまでは、誤って口の中を噛んだり、火傷をしたりするおそれがあるため、食事は控えましょう。麻酔が切れた後も、当日はやわらかくて冷たいもの(プリン、ヨーグルト、豆腐、ゼリー)を選ぶと安心です。傷口を刺激しやすい固いもの、熱いもの、辛いものは避けてください。うがいも強く行わず、飲食後は軽く口をゆすぐ程度にとどめましょう。

翌日以降は、傷口の経過を見ながらおかゆ、うどん、スープなどを少しずつ取り入れ、抜歯した側では噛まないように注意します。抜歯から2〜3日は傷口が安定していないため、やわらかい食材を選んで食べ、徐々に固形物を増やしていきましょう。1週間ほど経過し、痛みや腫れが落ち着いていれば、通常の食事に戻しても問題ありません。ただし、数週間程度は硬いものや刺激物は引き続き控えたほうが良いでしょう。

傷口を早く治すための食品と栄養素

傷の修復に関連しているのは、「タンパク質」「ビタミンC」「ビタミンB群」「亜鉛」などの栄養素です。抜歯後の回復を助けるために、これらが多く含まれている食品を意識してとりましょう。
  • タンパク質:細胞や組織の再生に不可欠です。(卵、肉、魚、豆腐など)
  • ビタミンC:コラーゲン生成を助けて傷の治りを促進します。(ブロッコリー、キウイ、いちごなど)
  • ビタミンB群:細胞の生まれ変わりを助け、皮膚や粘膜の健康維持をサポートします。(納豆、レバー、バナナなど)
  • 亜鉛:皮膚や粘膜の再生を助けます。(牡蠣、ごま、ナッツ類など)

抜歯後の過ごし方

抜歯後は、傷口を守り炎症を悪化させないために、日常の過ごし方に注意が必要です。まず、傷口を舌で触れたり、指や歯ブラシで刺激したりするのは避けましょう。刺激が加わると傷の治りが遅れるだけでなく、感染のリスクも高まります。また、強いうがいは血のかさぶた(血餅)が取れてしまい、出血や痛みが長引く原因になります。

さらに、喫煙や飲酒は血流を悪くし、治癒の妨げとなるため控えることが大切です。就寝時は、枕を少し高めにすると頭部に血液が集まりにくくなり、腫れを抑える効果が期待できます。また、抜歯した側を下にして寝ると患部が圧迫され、痛みや腫れが悪化することがあるため、反対側を下にして休むと安心です。

薬の服用と効果的な飲み方

抜歯後に処方される主な薬は、炎症や痛みを抑える鎮痛薬と、感染を防ぐための抗生物質です。処方された薬は必ず歯科医師の指示に従い、自己判断で中断したり量を調整したりしないようにしましょう。抗生物質は、痛みがなくても最後まで飲み切ることが大切です。鎮痛薬は胃に負担をかける場合があるため、服用のタイミングについても歯科医師や薬剤師に確認しましょう。

入浴・運動はいつからできる?

親知らずを抜歯した当日は、湯船に浸かると血行が良くなり、出血や腫れが強まるおそれがあるため、シャワーで軽めに済ませましょう。激しい運動も同様に血流を促し、治癒を遅らせる原因となるため、抜歯後2〜3日は控えて安静に過ごすことが大切です。回復のスピードには個人差がありますが、痛みや腫れが落ち着いてきたら、少しずつ普段の生活に戻していきましょう。

痛みが長く続くときの受診目安

親知らずの抜歯後は、数日から1週間ほどで痛みや腫れが落ち着くのが一般的です。痛みが長引く場合には、合併症が考えられます。以下のような症状があるときは、早めに歯科医院を受診してください。
  • 抜歯から1週間以上経っても痛みが続いている
  • 痛みが強くなっている
  • 出血が長時間止まらない、または繰り返す
  • 頬の腫れが引かず、むしろ広がっている
  • 口が開けにくい、開かない状態が続いている
  • 38℃以上の発熱や倦怠感がある
  • 傷口から膿や悪臭が出る
  • しびれや麻痺の症状がある

まとめ|親知らずの抜歯後、痛みが続くときは我慢せず相談を

親知らずの抜歯の痛みは、個人差はあるものの、通常は3〜7日程度で引いていきます。もし1週間以上経過しても痛みが続く場合、ドライソケットや感染症、神経の損傷などが疑われます。少しでも違和感があれば、我慢しないで歯科医師に相談しましょう。

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