この記事では、トリプトファンの働きや取り入れ方について解説します。あわせて、トリプトファンの豊富な食べ物や、手軽に補給できる「ミキサー不要のバナナときなこの豆乳スムージー」のレシピもご紹介します。
トリプトファンは、食べ物から摂る必要のある必須アミノ酸です。体内でタンパク質として利用されるだけでなく、セロトニンやメラトニンの材料となることから、メンタルヘルスや睡眠との関連が注目されています。ここでは、トリプトファンの1日の摂取目安量や過不足の影響、豊富に含まれる食べ物やレシピについて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
手軽にトリプトファンを補給できる「ミキサー不要のバナナときなこの豆乳スムージー」のレシピ
手軽にトリプトファンを補給できる「ミキサー不要のバナナときなこの豆乳スムージー」のレシピを紹介します。
バナナ・きなこ・豆乳を使い、トリプトファンに加えてビタミンB6、糖質を効率的に摂れるレシピです。ミキサー不要で簡単に作れるため、忙しい朝にも取り入れやすいでしょう。
「パンだけ」など栄養バランスが偏りがちな朝食にこのようなスムージーをプラスすると、全体のバランスを整えやすくなります。また、朝食をとる習慣がない方にとっても、無理なくはじめやすい一品です。
朝食は全身の健康づくりに役立つだけでなく、栄養不足を防ぎ、口や歯の健康維持にもつながります。
<材料>(2人分)調理時間:5分
- バナナ:2本
- きなこ:大さじ1
- レモン汁:小さじ1
- はちみつ(お好みで):小さじ1~
- 豆乳(調製):150 ml
<作り方>
- 厚手のポリ袋(またはチャック付き保存袋)にバナナ、きなこ、レモン汁、はちみつ(お好みで)を入れ、袋の上から手でよくつぶします。
- 1をコップに2等分して入れ、豆乳を加えてよくかき混ぜます。
<ポイント>
調製豆乳は甘みがあるため、はちみつはお好みで加えてください。
無調整豆乳を使う場合はバナナだけの甘みになるため、はちみつを小さじ1程度から加えてみましょう。
トリプトファンとは?
トリプトファンは体内でほとんど合成されないため、食べ物から摂取する必要のある必須アミノ酸です。
タンパク質として体づくりに使われるほか、セロトニンやメラトニンの原料にもなり、メンタルヘルスや睡眠との関連が注目されています。
さらに、トリプトファンは水溶性ビタミンであるナイアシンの材料にもなります。ナイアシンは栄養素の代謝に関わり、「ペラグラ」の予防にも重要な役割を担うビタミンです。
ペラグラとは?
ペラグラとは、ナイアシンが不足したことによって起こる栄養障害です。
その主な症状として、「3D」といわれる次の3つがあります。
日本では平均的な摂取量が推奨量を満たしていることもあり、ペラグラはほとんど見られません。
ナイアシンやペラグラについては、こちらの記事で解説しています。
トリプトファンに期待される効果・効能
トリプトファンの働きについて、詳しく見てみましょう。
メンタルヘルスのサポート
トリプトファンは脳内でセロトニンの材料となり、神経伝達物質として働きます。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、心の安定に深く関わる物質です。分泌量が不足すると、イライラや不安感との関連が知られています。
ただし、セロトニンが作られるにはトリプトファンだけではなく、糖質やビタミンB6なども必要です。特定のものに偏らず、さまざまな食べ物をバランスよく取り入れることが大切です。
ビタミンB6の解説とおすすめレシピはこちらで詳しく解説しています。
睡眠の質・生活リズムづくり
良質な睡眠に欠かせないメラトニンは、トリプトファンが原料となるセロトニンから作られるホルモンです。
メラトニンは暗くなると分泌がはじまり、体内時計を整えて自然な眠気をもたらします。メラトニンの分泌が十分でないと、体内時計が乱れやすくなり、睡眠や生活リズムの乱れにつながることが知られています。
質の良い睡眠が確保できれば、疲労回復を助けるだけでなく、日中の集中力向上などの良い影響も期待できるでしょう。
夜間のメラトニンがしっかり分泌されるには、トリプトファンを含む朝食をとり、日中に十分な光を浴びることが大切とされています。睡眠の質を高める上でも、バランスの良い朝食は欠かせない要素といえるでしょう。
自律神経との関わり
トリプトファンから作られるセロトニンが不足すると、ストレスや睡眠の質に影響し、自律神経のバランスが乱れる可能性があります。
自律神経は、体温や呼吸、消化、循環などをコントロールする神経です。そのバランスが乱れると、疲労感、冷え、頭痛、胃腸の不調といったさまざまな不調につながることが知られています。
トリプトファンは日々の不調を防ぐ上でも、役立ってくれる栄養素といえるでしょう。
歯・歯ぐき・歯ぎしりとの関係
歯ぎしり・食いしばりはストレス、不安、睡眠リズムの乱れと密接に関連しています。歯ぎしり・食いしばりは、歯のすり減り、歯周組織の損傷など歯に負担をかけるだけでなく、頭痛や首肩の凝り、歯周病の悪化などを招くおそれもあります。
歯ぎしり・食いしばりには、良質な睡眠と日々のストレスケアが欠かせません。睡眠とメンタルの土台を整える成分であるトリプトファンが、睡眠やストレスケアのサポートをしてくれるでしょう。
トリプトファンの1日の摂取量の目安はある?
厚生労働省による日本人の食事摂取基準では、トリプトファンのみの摂取量の目安は示されておらず、タンパク質としての目標量が示されています。
国際的な報告(WHO/FAO/UNU 合同専門協議会報告)では、必要なトリプトファンの量は、18歳以上で「4.0 mg/kg体重/日」とされています。体重50 kgであれば、必要なトリプトファンの量は200 mgという計算です。この量をひとつの目安にするのも良いでしょう。
トリプトファンが不足するとどうなる?
体内でトリプトファンが欠乏すると、トリプトファンから作られるナイアシンが不足し、ペラグラ発症のリスクとなることが知られています。ペラグラは皮膚症状や消化器症状などを引き起こす病気です。
ほかにも、トリプトファンの摂取が不足すると、脳内のセロトニンが減少すると報告されています。その結果、メンタルの不調や睡眠への影響を招く可能性も否定できません。
ただし、タンパク質を豊富に含む一般的な食事をとっていれば、トリプトファンだけが不足する状況は考えにくいものです。極端にタンパク源を控えるなどの偏った食事にならないよう、日頃から意識することが大切です。
トリプトファンの過剰摂取の影響はある?
通常の食生活では、トリプトファンだけを過剰摂取することはほとんどありません。
一方で、トリプトファンを含むタンパク質を長期的に過剰摂取した場合、腎臓への負担やエネルギーの過剰摂取につながる可能性があります。
また、サプリメントなどの健康食品からトリプトファンを過剰摂取した場合に、無気力、吐き気、頭痛などがみられたという報告もあります。使用する際は1日の目安量を必ず確認し、適切な範囲で取り入れましょう。
トリプトファンが豊富な食べ物
トリプトファンはタンパク質を含むさまざまな食べ物に含まれています。なかでも、大豆製品や鶏肉など、脂質の少ないタンパク源の方が、トリプトファンなどのアミノ酸を豊富に含んでいます。
食べ物の分類別に、含有量を表で紹介します。
レバーや鶏ささみなどの肉類
肉類のなかでは、レバー・鶏ささみ・鶏むね肉・ひれなど、脂質の少ない部位にトリプトファンが豊富に含まれています。
肉類には、セロトニンが作られる際に必要なビタミンB6も含まれており、効率的に栄養補給できます。
▼100 gあたりのトリプトファン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 豚レバー |
300 mg |
| 鶏ささみ |
290 mg |
| 豚ひれ |
290 mg |
| 鶏むね(皮なし) |
290 mg |
| 牛レバー |
290 mg |
| 鶏レバー |
270 mg |
| 牛ひれ |
270 mg |
| 豚もも |
260 mg |
かつおやまぐろなどの魚介類
魚介類のなかでは、かつおやまぐろ、鮭など比較的脂質の少ない魚を選ぶと、トリプトファンを効率よく摂取できます。
魚介類にもビタミンB6が含まれるため、セロトニンの合成をサポートしてくれるでしょう。
▼100 gあたりのトリプトファン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| かつお |
320 mg |
| まぐろ(赤身) |
320 mg |
| 鮭 |
250 mg |
| ぶり |
250 mg |
| あじ |
230 mg |
| さば |
230 mg |
| たい |
230 mg |
| ツナ缶 |
210 mg |
鶏卵やチーズなどの卵・乳類
トリプトファンは鶏卵やチーズにも豊富に含まれています。
卵やチーズは日常の食事に取り入れやすく、特に朝食のタンパク源として活用しやすい食材です。
▼100 gあたりのトリプトファン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 鶏卵(全卵) |
190 mg |
| 粉チーズ |
590 mg |
| プロセスチーズ |
300 mg |
| クリームチーズ |
120 mg |
大豆ミートやきなこなどの豆類
大豆や大豆製品にもトリプトファンが豊富です。
なかでも大豆ミートは、肉のような食感を楽しみながら脂質を抑えられる点が特長です。
きなこや納豆、豆乳なども手軽に取り入れやすいため、日々の食事に組み込むと良いでしょう。
▼100 gあたりのトリプトファン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 高野豆腐 |
750 mg |
| 大豆ミート |
680 mg |
| きなこ |
520 mg |
| 油揚げ |
360 mg |
| おからパウダー |
310 mg |
| 納豆 |
250 mg |
| 厚揚げ |
160 mg |
| 豆乳(調製) |
47 mg |
枝豆やバナナなどの野菜・果物類
肉や魚、大豆製品に比べると含有量は控えめですが、野菜や果物にもトリプトファンは含まれています。
なかでもバナナは、トリプトファン含有量自体は多くないものの、ビタミンB6や糖質を含むため、効率的に栄養補給できます。皮をむくだけで食べられる手軽さもあり、朝食に取り入れやすい食材といえるでしょう。
▼100 gあたりのトリプトファン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 枝豆(冷凍) |
170 mg |
| ブロッコリー |
59 mg |
| キウイフルーツ(黄) |
38 mg |
| アボカド |
29 mg |
| キウイ(緑) |
14 mg |
| バナナ |
10 mg |
トリプトファンは心と睡眠を支える必須アミノ酸
トリプトファンはセロトニンやメラトニンの材料となり、メンタルヘルスや睡眠リズムを支える必須アミノ酸です。
通常の食事で不足するケースは多くありませんが、食事の偏りや朝食を抜く習慣が続くと影響する可能性があります。肉や魚、大豆製品などをバランスよく組み合わせ、毎日の食事から無理なく補うことを心掛けましょう。
【参考】
厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2025年版)」
文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
FAO/WHO/UNU. Protein and amino acid requirements in human nutrition. Techni
cal Report Series 935, WHO, Geneva. 2007.