差し歯は歯の神経の治療後、歯の根が残っている場合に行われる治療です。差し歯には保険診療と保険診療外のものがあり、それぞれ特徴が異なります。
差し歯とは? 構造や治療の流れを解説
差し歯は歯の根があるときに行われる治療です。むし歯や歯周病の他、歯の外傷などで差し歯を選択する場合があり、若い方も無関係ではありません。まずは差し歯の構造や治療の流れを見ていきましょう。
差し歯の構造
差し歯とは歯の根の上に土台を作り、その上に被せるものです。むし歯菌が歯の神経にまで到達した場合、歯の神経の治療のために多くの歯質を削らないといけません。その神経のあった場所にコアと呼ばれる支台を差し込むことから、差し歯と呼ばれています。
差し歯には、保険適用のプラスチックや金属でできたものと、自費診療となるセラミックなどで作られたものがあります。ただし、歯の根がない場所には差し歯を入れることができません。
差し歯の治療の流れ
差し歯治療の流れは、以下の通りです。
まずはむし歯の治療を行い、次に歯の神経の治療を行います。神経の治療を終えた後は、歯根の先端へ薬を詰めて、できるだけ無菌状態にしておきます。
まずはむし歯の治療を行い、次に歯の神経の治療を行います。神経の治療を終えた後は、歯根の先端へ薬を詰めて、できるだけ無菌状態にしておきます。
【差し歯治療の流れ】
- 初診・カウンセリング
- 診断や検査
- むし歯の治療
- 根管の治療(重症度により通院回数が異なります)
- 形を整え、差し歯の土台作り
- 差し歯取りつけ
- 噛み合わせ調整、定期的なメンテナンス
トータルの治療期間は1~2ヵ月ほどが目安ですが、神経の状態や除去本数により治療回数が異なるため、治療期間には個人差があります。
差し歯のメリット・デメリット
差し歯の特徴をしっかり理解して、納得した上で治療に進めるように、差し歯のメリット・デメリットも把握しておきましょう。また、差し歯以外の選択肢についてもあわせてご紹介します。
差し歯のメリット
差し歯は、素材によってメリットが異なります。保険適用の範囲となる素材は、安価に治療を受けられることがメリットです。一方で、保険適用外の素材は保険適用の素材よりも費用がかかりますが、強度があり見た目もキレイです。
また、差し歯は外科手術ではないため、身体的な負担が少なく、多くの歯科医院で行えます。
差し歯のデメリット
差し歯の土台を作るには、歯の健康な部分を大きく削る必要があります。これにより、歯の寿命が短くなってしまう可能性があります。
根の状態が悪い場合は、再治療が必要です。また差し歯が取れたり、素材によっては変色や劣化が生じたりする場合もあります。
差し歯に代わる治療方法
差し歯が検討される歯は既に歯質を大きく失っている状態のため、詰め物や被せ物での補綴(ほてつ)治療はできません。差し歯を選択しない場合は、抜歯してインプラントや部分入れ歯、ブリッジなどの選択肢があります。これらの治療は、審美性や耐久性、料金などに違いがあります。
インプラントについて、詳しくはこちらの記事をチェックしてみてください。
差し歯に使われる素材の種類や値段
差し歯には保険診療のものと保険診療外のものがあり、ご自身で選択することができます。それぞれの種類や値段をご紹介します。
保険診療で使われる差し歯の素材と値段
保険適用となる差し歯の素材には、硬質レジンジャケット冠・CAD/CAM冠・硬質レジン前装冠・銀歯があります。保険診療の値段で1本あたり3,000~8,000円ほどです。
硬質レジンジャケット冠は、歯科用のレジン(樹脂)から作られた素材です。CAD/CAM冠は、レジンとセラミックを混ぜて作られている素材です。 硬質レジン前装冠とは、金銀パラジウム合金などの金属からできた素材で、外側に硬質レジンが使われています。硬質レジン前装冠はほとんどの歯の差し歯に用いることが可能ですが、保険適用となるのは、前歯~犬歯までの歯です。
銀歯は、全体が金銀パラジウム合金などの金属でできています。前から5番目以降の歯の差し歯には銀歯が用いられることが多いです。
硬質レジンジャケット冠は汚れがつきやすく、時間が経つと変色します。CAD/CAM冠は、硬質レジンジャケット冠より強度がありますが、部位や条件により保険適用出来る範囲が決まっています。硬質レジン前装冠・銀歯は、金属が錆びたり、溶けだしたりする恐れがあり、金属アレルギーや歯ぐきが変色する可能性もあります。
全額自己負担の素材と値段
全額自己負担となる差し歯には、オールセラミック・ハイブリッドセラミック・メタルボンド・ジルコニアセラミッククラウン・ゴールドクラウンがあります。1本あたり約4万円~20万円ほどの費用がかかります。
オールセラミックとは、すべてセラミックから作られた差し歯のことです。ハイブリッドセラミックは、歯科用プラスチックであるレジンとセラミックの微細な粒子を混ぜた素材で作られる差し歯で、保険診療の硬質レジンジャケット冠よりも強度があります。
差し歯をなるべく長持ちさせるポイント
選ぶ素材によっても寿命は異なるものの、手入れに気を付ければ、差し歯を長持ちさせることができます。差し歯が欠けたり、割れたりしないように、以下の点を意識しましょう。
歯ぎしりをしている方は対策する
歯ぎしりが歯に与えるダメージは大きいものです。差し歯だけではなく、天然の歯にも影響を与える恐れがあります。就寝中、無意識に歯ぎしりをしている方は、睡眠時専用のマウスピースを活用すると良いでしょう。歯科医院で作成するマウスピースは保険適用となるため、5,000円ほどで作成できます。
睡眠時専用マウスピース(ナイトガード)について、詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。
むし歯や歯周病を予防する
むし歯や歯周病になると、差し歯が取れやすくなってしまいます。差し歯が取れることを防ぐためにも、歯と歯の間や、歯と歯ぐきの間の汚れをしっかりと落とすことが大切です。歯ブラシで落としきれないところは、歯間ブラシなどを使って、歯をキレイに保ちましょう。
定期的に歯科医院を受診する
セラミックなどにも歯垢や着色汚れは付着するため、自分でケアするには限界があります。定期的に歯科医院を受診してクリーニングしてもらうことが大切です。
唾液検査で自分の口内環境を把握する
歯の定期検診の際に、あわせて唾液検査で自分の口内環境もチェックしましょう。唾液検査は、シルハがおすすめです。
シルハは、10秒ほど水で口をすすぐだけで、以下の6項目の検査内容を測定でき、むし歯や歯周病予防に役立てられます。
むし歯菌の活性度、歯を溶かす酸の強さがわかる酸性度、酸に対する防御力の緩衝能、口内の炎症がわかる白血球、タンパク質の量、口内清潔度の指標となるアンモニアの6項目です。
むし歯菌の活性度、歯を溶かす酸の強さがわかる酸性度、酸に対する防御力の緩衝能、口内の炎症がわかる白血球、タンパク質の量、口内清潔度の指標となるアンモニアの6項目です。
シルハの検査ができる医療機関の検索はこちらからできます。
差し歯が取れたときの対処法や気を付けること
差し歯治療をしてある程度の年数が過ぎると、突然差し歯が取れてしまうこともあります。次に、差し歯が取れたときの対処法や気を付けることをご紹介します。
差し歯が取れたときの対処法
差し歯が外れたときは、なくさないようにジッパーつきの保存袋などに入れましょう。保存袋がない場合は、ティッシュに包んでください。
鏡で確認して、差し歯が取れた部分が黒くなっているときはむし歯になっている可能性が高いため、早急に歯科医院を受診してください。また、差し歯が取れた部分には汚れが溜まっていることが多いため、歯ブラシでキレイに磨きましょう。
差し歯が取れたときに気を付けること
取れた差し歯は、自分で元に戻してはいけません。誤飲したり、歯が欠けたりする恐れがあります。また、差し歯をつけていた部分もなるべく触れないようにしましょう。触れることで、痛みが生じてしまう場合があります。
また、瞬間接着剤を使って差し歯をくっつける方もいますが、この行為は絶対にしないでください。歯の根が折れてしまったり、差し歯が使えなくなったりすることがあります。
差し歯とはどんなものかを知り、歯科医に相談を
差し歯は、歯の根が残っている場合に選択できる治療法です。使用する素材には、保険診療のものと保険診療外のものがあります。保険診療のものは安価で済ませられ、保険診療外のものは強度や審美性が高い分、値段も上がります。それぞれの特徴と価格を知り、歯科医と相談しながら差し歯を選びましょう。
また、差し歯を入れた後は、よりむし歯や歯周病予防に努めて、差し歯を長持ちさせることを心がけてくださいね。