20代で歯の神経を抜いても大丈夫? 考えられるリスクとは【歯科医師監修】

20代で歯の神経を抜いても大丈夫? 考えられるリスクとは【歯科医師監修】

20代で歯の神経を抜く人は少なくありません。歯の神経を抜く理由や治療の内容、その影響について解説します。

               
(2023年2月24日更新)
人生100年時代と言われる世の中、いつまでも健康な歯で楽しく食事を楽しみたいですね。しかしながら、自分でしっかり歯のケアをしていてもむし歯になってしまい、神経を抜くことになる方もいるかもしれません。では、若いときに神経を抜く治療(根管治療)を行った場合、その後の人生に影響はあるのでしょうか? 
この記事では、早期の根管治療が及ぼす影響についてお話しします。

そもそも歯の神経を抜くのは何故か

まず知っておくべきことは、「むし歯とは何なのか」です。むし歯とは口内の菌により歯が溶かされ、徐々に歯が脆くなり、最終的には歯に穴が開いてしまう病気の事です。

むし歯には、ミュータンス菌などの「細菌」、ショ糖や果糖などの「糖質」、歯の表面を構成するエナメル質の厚さなどの「歯の質」が関係しています。
初期のむし歯であれば、「再石灰化」という現象により自然治癒する可能性もありますが、進行してしまったむし歯の場合は期待できません。歯科医院での適切な治療が必要となります。

「再石灰化」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。合わせてご覧ください。
むし歯がかなり進行して原因菌が神経まで達してしまうと、激しい痛みをもたらします。この激しい痛みが続くとまともに食事がとれなかったり、夜眠れなかったりするなど、二次的に生活への大きな支障をきたしてしまいます。この段階までくると、歯の神経を抜かない限りは痛みの改善の見込みがありません。

20代で歯の神経を抜いた経験のある割合は28.1%

「一般社団法人 日本歯内療法学会」の調査によると、20代でむし歯の治療を経験している割合は65.6%とされています。その中で歯の神経を抜いた経験のある方は20代で28.1%にのぼり、4人に1人に達しています。その後、年代ごとに高まって40代で60.0%に達します。歯の神経を抜いた経験のある方は、定期健診と日々のケアを怠らないことが大切です。
出典:歯の神経を守っていますか?神経を抜いた経験者は20代で3人に1人、働き盛りのオトナ世代から要注意!(一般社団法人 日本歯内療法学会 2022年11月4日発表資料)

段階別 歯の神経を抜くケース

むし歯は進行具合に応じて、いくつかのステージに分類されます。

歯の神経を抜く前の段階

C0
むし歯になる一歩手前の状態です。

C1
むし歯の初期であり、エナメル質の表面が菌に侵食された状態です。多くの場合、自覚症状はほとんどありません。

C2
むし歯が象牙質まで進行した状態です。ここまで来ると、食べる際に痛みを感じたり、冷たいものがしみたりといった自覚症状が出現してきます。

歯の神経を抜く段階

C3
歯髄(神経)まで侵食された状態です。この時期になると強い痛みが出現し、食べる事が困難になる事もあります。

C4
さらに進行した状態で、歯の形状を留める事が難しく、歯冠の崩壊に至ります。

このように、むし歯の進行はいくつかのステージに分かれており、具体的な治療方針を決める上での指標となります。基本的には、C3の段階で神経を抜くケースが多いようです。

症状別 歯の神経を抜くケース

上のようなC3~C4の段階のほか、次のようなケースの場合にも、歯の神経を抜くことがあります。

歯に激痛を感じる

物を食べる時だけでなく、安静時もズキズキと痛みを感じます。この状態であれば、すぐに歯科医院を訪れたほうが良いでしょう。

冷たいものや温かいもので痛みを感じる

神経まで原因菌に侵食されると、温かい物や冷たい物で痛みを伴うことがあります。食べていないときは痛みを感じにくいため放置しがちですが、要注意の段階です。

噛んだ時に痛む

噛み合わせの際に強い痛みを感じます。柔らかいものでは痛みを感じないケースもありますが、そのまま放置しておかないほうがいいでしょう。

むし歯がある歯ぐきに腫れ、痛みがある

原因菌の侵食がさらに進むと歯ぐきの腫れが見られ、そこに触れることで強い痛みが発生します。むし歯があるのはわかっていても、無意識に痛みのない部分で咀嚼してごまかすことが多いので、注意が必要です。

根の先から膿が出ている

膿が出ている状態は、かなりむし歯が進んでいると言えます。この状態で放置しておくと全身の健康に関わるケースもあるため、必ず歯科医院で治療を受けてください。

どんな治療? 歯の神経を抜く「根管治療」

歯の神経を抜く場合に行うのが根管治療です。はじめにむし歯を除去し、原因菌に感染した神経を取り除いた後、神経を抜いた箇所の消毒をおこない、穴の空いた部分をふさいで被せ物をします。繰り返し通院をして治療をしていきます。

むし歯の除去

はじめに、むし歯になっている部分を丁寧に取り除いていきます。

神経の除去・洗浄

菌に感染した神経を丁寧に取り除いた後、消毒液を入れてしっかり洗浄します。

根元の充填・被せ物

消毒した後の根元に詰め物をして、歯に被せ物をします。被せ物にはいくつかの種類がありますが、一般的には銀歯やセラミックなどが使われます。種類によって保険適用・非適用や性能の違いがありますので、歯科医師とよく相談して決めるのが良いでしょう。

歯の神経を抜いても大丈夫? 考えられるリスク

歯の神経を抜いた場合、以下のような影響があります。

歯が脆くなる

歯の神経は、歯に栄養を与える重要な役割を担っています。神経を取り除くことで栄養が行き渡らなくなり、歯が脆くなっていきます。

感覚が麻痺する

神経を取り除くと、痛みなどをほとんど感じなくなります。そのため、口内に異常が起こった場合でも気付きにくいというデメリットがあります。

歯が変色する

歯の神経を抜いた後は、歯の色が変色して黒っぽくなるおそれがあります。これも、歯への栄養供給が制限されたことによる症状です。見た目にも影響を与えるので、コンプレックスを抱える方も多いでしょう。

治療期間が長くなる

歯の神経を抜く根管治療は、先に書いた通り治療ステップが多く、しっかり消毒をする必要があります。そのため、治療は1回では終わらず、長期間の通院が必要となります。

激しい痛みが伴う

根管治療中は、他の歯科治療に比べて痛みを伴うことが多いです。そのため、患者負担の大きい治療でもあります。

早ければ40代で抜歯のおそれ

神経を抜いた後は、とにかく歯が脆くなります。そのため、比較的若年で永久歯を失うリスクが大きくなります。

他の歯も早いうちになくなる

歯を一箇所でも失うと歯並びの全体的なバランスが崩れ、他の歯を失うリスクも高まります。

歯の寿命を延ばす! 神経を抜いた後にすべき対策

根管治療を行った歯は実際どれくらい脆くなるのでしょうか。

米国での研究において、根管治療を受けた後の歯の寿命はおよそ11年であることが報告されています。また、治療後の処置方法によっても歯の寿命は異なることがわかりました。
出典:根管治療後の歯の寿命は?(薬学生の専門サイト マイナビ薬学生Switch)

根管治療を施すことでしばらくの間は歯の寿命を維持することは可能ですが、より長く歯を保つためには、被せ物や永続的な修復治療をせざるを得なくなります。では、健康な歯を維持し、歯の寿命を延ばすためにはどうすればいいのでしょうか。

歯磨きなどホームケアを徹底する

歯ブラシを使用する際は、必ず毛先を歯の面に当て、軽い力で磨いてください。この際、小刻みに動かすのがポイントです。決して力を入れ過ぎず、歯ぐきも傷つけないよう注意してください。
歯並びの悪い方は、ブラシが歯に適切に当たっていない場合が多いので、鏡を見ながら行うと良いでしょう。

歯科医院で定期的なメインテナンスを受ける

丁寧に歯磨きをしているつもりでも、磨き残しはあるものです。治療した歯を維持し寿命を延ばすためには、定期的に歯科医院を受診して、適切なブラッシング方法の指導を受けたり、治療した歯のメインテナンスを受けたりすることが大切です。
メインテナンスの所要時間は1時間程度です。3か月に1度のメインテナンスから始め、口内環境が改善次第、6か月に1度の頻度に移行していきます。

メインテナンスの際は、あわせてシルハによる口内環境チェックを受けてみてはいかがでしょうか。口内環境は一人一人で異なるので、結果をもとに、自分はどういったケアをするべきか歯科医院からアドバイスをしてもらうことができます。

唾液検査シルハができる医療機関は、こちらから検索できます。

神経を抜く一歩手前なら可能! 「歯を削らない」治療法

ひと昔前であれば、むし歯と言えば歯を削るイメージがありましたが、昨今の歯科治療技術の向上により、歯を削らない治療法が登場しています。

ドックベストセメント治療

ドックベストセメント治療は、銅イオンと鉄イオンが混ざり合ったセメントをむし歯部分に塗ることで、原因菌を殺菌する治療法です。むし歯の再発リスクを低減できる効果があるとされています。

ヒールオゾン治療

ヒールオゾン治療は、オゾンの力により原因菌をピンポイントで殺菌する治療法です。オゾンの殺菌力は非常に高く、塩素の7倍と言われています。歯を削る事がほとんどないため、身体的な負担が少ない治療法の一つです。

3Mix法

3Mix法は3種類の抗生物質を混ぜ合わせた薬剤をむし歯に直接塗布する治療です。痛みや治療回数が少ないのがメリットです。

まとめ

むし歯があるのに治療を受けていない方は、「歯を削ること」「歯の神経を抜くこと」のメリット、デメリットを知った上で早めに治療を受けるのが良いでしょう。また、歯科医師のスキルでも治療後の状態が変わってくると言われています。そのため、安心、信頼できる歯科医師を見つけることも大切です。

複数の歯科医院と相談し、セカンドオピニオンを受けることも一つの方法として効果的かもしれません。
「人生100年時代」、末長く自分の歯で美味しく食事ができるよう、歯に対しての正しい知識とケア方法を身につけることが何よりも大切です。歯のことを安易に考えず、神経を抜かなければいけない状態になる前に、積極的に歯科医院を受診するようにしてください。

監修歯科医師:重永基樹先生

東京都新宿区西落合の哲学堂デンタルクリニック院長。1999年に愛知大学院大学卒業。2002年に現在のクリニックを開業。「なるべく削らない・抜かない・神経をとらない」方針で治療を行っている。

哲学堂デンタルクリニックのホームページはこちら
http://tetsugakudo.com/

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