口の中が唾液でいっぱいになる…。
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。私たちにとって身近な唾液。口の中と全身の健康を守るためになくてはならない大切な存在ですが、多すぎても食事や会話などの日常生活に支障が生じてしまいます。この記事では、唾液が出るメカニズムと主な役割、唾液が多いと感じる理由、その対処法を解説します。
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。私たちにとって身近な唾液。口の中と全身の健康を守るためになくてはならない大切な存在ですが、多すぎても食事や会話などの日常生活に支障が生じてしまいます。この記事では、唾液が出るメカニズムと主な役割、唾液が多いと感じる理由、その対処法を解説します。
唾液が出るメカニズム
私たちの口の中は常に唾液で潤っています。いったいなぜ唾液が出るのか、そのメカニズムを解説します。
そもそも唾液とは?
唾液とは、唾液腺(耳下腺、舌下腺、顎下腺など)から口の中に分泌される体液です。
唾液の99%以上は水分で、残りの約1%にムチン(粘性のタンパク質)やIgA(免疫物質)など、100種類以上の重要な成分が含まれています。
唾液の99%以上は水分で、残りの約1%にムチン(粘性のタンパク質)やIgA(免疫物質)など、100種類以上の重要な成分が含まれています。
唾液が分泌される仕組みと種類
唾液は何もしていなくても自然と分泌されています。この唾液を「安静時唾液」といいます。一方で、味やニオイを感じることが刺激となって分泌が促される「刺激唾液」もあります。それぞれの唾液の分泌には自律神経(交感神経、副交感神経)が関わっています。
安静時唾液
刺激が加わっていなくても自然に分泌される唾液です。主に副交感神経が優位に働いているときに分泌される唾液で、比較的サラサラとした性状をしています。1日に分泌される唾液の30%ほどが安静時唾液とも言われています。
刺激唾液
味やニオイなどの刺激が加わることで分泌される唾液です。
ネバネバとした性状が特徴であり、主に交感神経が優位に働いているときに分泌されます。1日に分泌される唾液のうち70%ほどが刺激唾液になります。
ネバネバとした性状が特徴であり、主に交感神経が優位に働いているときに分泌されます。1日に分泌される唾液のうち70%ほどが刺激唾液になります。
唾液は唾液腺から分泌される
唾液は口の中にある「唾液腺」から分泌されています。
健康な成人の場合、唾液の分泌量は1日あたり約1.0~1.5リットルです。これは500 mlのペットボトル2〜3本分に相当します。しかし個人差があり、健康状態や季節、年齢、性別などによっても変動します。
健康な成人の場合、唾液の分泌量は1日あたり約1.0~1.5リットルです。これは500 mlのペットボトル2〜3本分に相当します。しかし個人差があり、健康状態や季節、年齢、性別などによっても変動します。
唾液の役割とは?
唾液は、私たちの健康を守る重要な役割を果たしています。ここでは、主な5つの働きを紹介します。
食べ物を飲み込みやすくする
パンやスナック菓子などの水分が少なく、パサパサした食べ物でも、唾液と混ざることで泥状にまとまり、噛みやすく飲み込みやすくなります。
消化を助ける
唾液に含まれるアミラーゼと呼ばれる消化酵素の1種が、食べ物に含まれるでんぷんを分解し、胃で消化されやすい状態にします。
味を感じやすくする
唾液が、舌にある味蕾(味を感じる器官)に味のもととなる物質を届けることで、食べ物の味を感じやすくなります。
口の中を清潔で健康に保つ
唾液には口の中の細菌や食べかすを洗い流す自浄作用があり、むし歯や口臭を防ぎます。
また、唾液に含まれるカルシウムやリンが、歯の表面をおおうエナメル質を再生し、むし歯になりかけた歯の修復を助けます。
また、唾液に含まれるカルシウムやリンが、歯の表面をおおうエナメル質を再生し、むし歯になりかけた歯の修復を助けます。
全身の健康を守る
唾液には、リゾチームやラクトフェリンなどの抗菌成分が含まれており、細菌やウイルスから全身の健康を守る役割を担っています。
唾液の役割や機能、唾液が少ない場合の影響については、こちらの記事で解説しています。
唾液の量が多いと感じる7つの原因と対策
唾液が多いと感じてしまう状態を「唾液過多」といいます。
自分では唾液が増えたと感じても、口からあふれ出るほどの量でなければ、病的なものではないことがほとんどです。唾液の量は少ないよりも多いほうが良いです。しかし、量が多すぎると、会話がしにくい、何度も唾を飲み込む手間がある、飲み込み過ぎて気持ち悪い、などの悪影響があります。
自分では唾液が増えたと感じても、口からあふれ出るほどの量でなければ、病的なものではないことがほとんどです。唾液の量は少ないよりも多いほうが良いです。しかし、量が多すぎると、会話がしにくい、何度も唾を飲み込む手間がある、飲み込み過ぎて気持ち悪い、などの悪影響があります。
この解消のためには、まず原因を見極めることが大切です。唾液が多いと感じる原因としては「実際に分泌量が増えている」場合と、「唾液の量が減りにくくなって増えたように感じている」場合があります。
ここでは、唾液が多いと感じる時に考えられる原因と対処法について解説します。
消化機能の低下(唾液が増えている)
唾液には、食べ物の消化吸収を促進する役割があります。唾液が多いと感じるのは、胃腸が疲れているサインかもしれません。体内の消化吸収能力が弱っていると、その働きを助けようとして唾液が多く分泌されます。暴飲暴食を控えるなど、食生活を整えて、しっかり労ってあげましょう。よく噛んで食べると唾液が適切に分泌され、胃腸の負担が減って消化不良の防止に役立ちます。
口の中のトラブル(唾液が増えている)
むし歯や歯周病などのトラブルが起こると、口の中を清潔に保とうとして自然と唾液の分泌量が増えます。
唾液は「天然のデンタルリンス」といわれるほど高い洗浄効果をもちますが、むし歯や歯周病といった疾患の根本的な解決には、歯科医院での専門的な治療が必要です。
唾液は「天然のデンタルリンス」といわれるほど高い洗浄効果をもちますが、むし歯や歯周病といった疾患の根本的な解決には、歯科医院での専門的な治療が必要です。
自律神経の乱れ(唾液が増えている)
唾液は唾液腺から分泌されています。その唾液腺をコントロールしているのが自律神経です。
自律神経が乱れると、唾液の量も増えることがあります。自律神経が乱れる主な原因は、ストレスと生活習慣の乱れです。
生活リズムを整えて、自分に適した方法でストレスを解消し、リラックスできる時間をつくりましょう。
自律神経が乱れると、唾液の量も増えることがあります。自律神経が乱れる主な原因は、ストレスと生活習慣の乱れです。
生活リズムを整えて、自分に適した方法でストレスを解消し、リラックスできる時間をつくりましょう。
妊娠中の「よだれつわり」(唾液が増えている・減りにくい)
よだれつわりは、妊娠によるつわりの一種です。女性ホルモンの増加によって唾液の量が増え、口の中がよだれでいっぱいになります。味やにおいに不快感を覚えるため、よだれを飲み込めなくなっている状態です。つわりがおさまれば自然と症状が落ち着いてくることが多いでしょう。
風邪などによる喉の炎症(唾液が減りにくい)
風邪などが原因で喉が腫れてしまい、唾液を飲み込むと痛みを感じるような時、無意識に唾液を飲み込む回数が低下します。飲み込む回数が少ないと必然的に口の中に唾液が溜まりやすくなるため、量が増えたように感じるのです。風邪などによる一時的な炎症の場合、唾液が飲み込めなくても心配する必要はありません。一般的には数日で回復します。喉の痛みを和らげるために、乾燥や刺激物を避け、マスクを着用したり加湿器を活用したりして、喉の潤いを保ちましょう。ただし、唾液も食事も飲み込めないほど強烈な痛みが出る場合は、重症の感染症が疑われます。早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
心因性のもの(唾液が減りにくい)
友人や家族から唾液を飲み込む音が大きいと指摘されたり、しゃべると唾が飛ぶと言われたりしたのをきっかけとして、唾液に意識が向きすぎ、唾液が増えたと感じることがあります。
気にすればするほど、余計に体が緊張して飲み込みやすさに悪影響を与えるため「まあ、いいか」「そんなこともある」など気楽に考えて過ごしましょう。
飲み込む力の低下(唾液が減りにくい)
高齢になると、口の周りや舌の筋肉が衰えて飲み込む力が低下するため、唾液が飲み込めずに口の中に溜まってしまい、唾液が増えたと感じるようになります。また、特定の神経障害や脳卒中などの病気が原因で、飲み込む力が低下する可能性もあります。
病気の原因がわかっている場合は、専門医と相談してその治療を優先しましょう。
自分でできるケアとしては口と舌のトレーニングが有効です。
病気の原因がわかっている場合は、専門医と相談してその治療を優先しましょう。
自分でできるケアとしては口と舌のトレーニングが有効です。
頬の筋トレ
- 口の中に空気を含ませて、頬を膨らませる
- 口の上・右・下・左の順に、空気の塊を時計回りにすばやく移動させる
- 2を10回繰り返す
舌の体操
- 口を大きく開けて、舌を出したり引っ込めたりする
- 舌を出して、上下左右に動かす
- 2を10回繰り返す
舌のトレーニングについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
医療機関への相談も検討しましょう。
唾液があまりにも多くなると、普段の生活にまで支障をきたすことがあります。セルフケアでは対処しきれない場合は、まず医師や歯科医師に相談して原因を特定し、それぞれの原因に合った治療の提案を受けましょう。
まず何科に相談するか
主な診療科として、耳鼻咽喉科、歯科、口腔外科などが挙げられます。唾液の量や飲み込む力に問題がないのに生活に支障をきたす場合は、心因性の唾液過多が考えられるので、心療内科や精神科を受診しましょう。
どのような検査をするか
唾液過多が疑われる場合、実際にどれくらいの唾液が出ているのか、唾液量の検査が行われます。前述の通り、唾液には安静時唾液と刺激唾液があるため、診察結果を踏まえてこれらの一方、もしくは両方の検査が行われます。
安静時唾液の検査
リラックスした状態を15分間保った後に、口の中に分泌された唾液を容器の中に吐き出して計測します。正常値は1.5 ml(1.5 cc)以上とされています。正常値を大幅に超える場合は唾液過多が疑われます。
刺激唾液の検査
特殊なチューイングガムを使用した検査が一般的です。市販のものよりも硬めのガムを10分間噛み、口の中に分泌された唾液を容器の中に吐き出して計測します。正常値は10 ml(10 cc)以上とされ、大幅に超える場合は唾液過多が疑われます。正式なガムテストは10分間ですが、5分に短縮して行われることも多くあります。
どのような治療をするか
治療の仕方は原因によってさまざまです。原因に合わせて、薬物療法や手術、歯科治療、カウンセリング、認知行動療法などの治療を行います。
まとめ 唾液が多い原因に合わせた対処をしましょう
唾液は私たちの健康を守るために重要な役割を果たしています。しかし、唾液が増えすぎると日常生活に支障をきたす場合もあります。唾液が多いと感じる原因はいくつか考えられるので、それぞれの原因に合わせて適切に対処しましょう。