むし歯の原因は、昔と比べて、歯の磨き方や砂糖が入った食べ物の摂取だけではなくなりました。原因が多様化しているため、ライフスタイルの変化に合わせた予防が必要です。
むし歯の原因は時代で変わってきた?
むし歯になる原因はさまざまですが、以前は「歯の磨き方が悪い」「砂糖を使用した食べ物の摂取」などが挙げられていました。これは、むし歯菌が砂糖を分解するときに酸を生成し、この酸が歯を溶かすことでむし歯になるためです。
もちろん現在でも、砂糖を多く含む食品はむし歯リスクが高まります。
しかし、甘いものを摂取せず歯磨きの方法に気をつけていてもむし歯になることがあります。
近年では、むし歯の原因として次の要素も重要と考えられています。
もちろん現在でも、砂糖を多く含む食品はむし歯リスクが高まります。
しかし、甘いものを摂取せず歯磨きの方法に気をつけていてもむし歯になることがあります。
近年では、むし歯の原因として次の要素も重要と考えられています。
- 歯の質
- 口内細菌のバランス
- 唾液の質と量
- 歯並び
また、何を食べるかだけではなく、いつ/何回食べるかや、歯や口内に負担が掛かっていないかなども、むし歯に影響する重要な要素となります。
具体的には、むし歯になりやすくなる要素として、次のようなことが挙げられます。
具体的には、むし歯になりやすくなる要素として、次のようなことが挙げられます。
- 口呼吸をしている
- 歯ぎしりをしている
- ストレスがたまっている
- 食事の回数が多い
- 朝食を食べない
統計で見るむし歯の有病率の推移
むし歯の有病率は時代とともに変化し、歯を失う原因も変わってきています。
有病率が変わった
※厚生労働省「歯科疾患実態調査」平成17年~令和4年の統計より抜粋
近年、子どものむし歯が減っているといわれています。一方、大人のむし歯については、年齢が高いほどむし歯を持つ人の割合が高くなっています。
子どもの頃にむし歯にあまりならなかった場合、大人になってもむし歯に罹患していない歯を有することになります。その結果、生涯を通じてむし歯を発症する可能性が高くなり、歯を多く持つ高齢者が増えたことで、高齢者のむし歯は以前に比べて大きく増加しています。
平成17年から令和4年の有病率の推移を見てみると、「う歯(むし歯)を持つ者の割合 」は、5歳以上35歳未満では減少傾向を示していますが、65歳以上では増加傾向にあることがわかります。
子どもの頃にむし歯にあまりならなかった場合、大人になってもむし歯に罹患していない歯を有することになります。その結果、生涯を通じてむし歯を発症する可能性が高くなり、歯を多く持つ高齢者が増えたことで、高齢者のむし歯は以前に比べて大きく増加しています。
平成17年から令和4年の有病率の推移を見てみると、「う歯(むし歯)を持つ者の割合 」は、5歳以上35歳未満では減少傾向を示していますが、65歳以上では増加傾向にあることがわかります。
歯を失う原因1位はむし歯ではない
歯を失う原因というと、まずむし歯を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし近年、永久歯を失う原因の第1位は歯周病で、むし歯は第2位になります。
年齢階級別では、働き盛りの40代から歯周病の数字が年々増え、歯を失う割合が多くなるとされています。歯周病は40歳以降に突然かかるのではなく、20代・30代のときに初期の歯周病である歯肉炎が、長い年月を経て歯周病として進行していくケースが多いとされています。
年齢階級別では、働き盛りの40代から歯周病の数字が年々増え、歯を失う割合が多くなるとされています。歯周病は40歳以降に突然かかるのではなく、20代・30代のときに初期の歯周病である歯肉炎が、長い年月を経て歯周病として進行していくケースが多いとされています。
子どもの有病率が下がった主な理由
近年、子どものむし歯が減少しているとされていますが、その理由について解説します。
予防歯科の普及
昔は歯医者に行く理由は、むし歯や歯周病の治療が中心でした。定期健診も一般的ではありませんでしたが、現在は歯科検診の制度として、市町村が実施する乳幼児歯科健診、学校が実施する学校歯科健診があります。
また、むし歯を治すだけでなく、予防に力を入れる歯科医院も増えてきました。定期的な検診や、歯磨き指導など、歯科医院による予防対策が充実してきたことも、むし歯減少に貢献しているといえるでしょう。
また、むし歯を治すだけでなく、予防に力を入れる歯科医院も増えてきました。定期的な検診や、歯磨き指導など、歯科医院による予防対策が充実してきたことも、むし歯減少に貢献しているといえるでしょう。
フッ素の普及・習慣化
歯の表面を強化し、むし歯になりにくくするフッ素の活用が一般的になったことも、むし歯減少の大きな要因の1つです。とくに日本では、2017年に世界水準の1,450 ppmというフッ化物濃度の歯磨き粉が認められました。
フッ素を配合した歯磨き粉や歯科医院でのフッ素塗布など、さまざまな方法でフッ素を取り入れることで、むし歯予防効果を高めることができたといえるでしょう。
フッ素を配合した歯磨き粉や歯科医院でのフッ素塗布など、さまざまな方法でフッ素を取り入れることで、むし歯予防効果を高めることができたといえるでしょう。
啓蒙活動
1989年に日本歯科医師会と厚生省(当時)は、80歳になっても自分の歯を20本以上ある状態を目指す「8020運動」 が提唱されました。
1928年から1938年まで日本歯科医師会が実施していた6月4日に「虫歯予防デー」は、その後「護歯日」、「口腔衛生週間」など名称を変更しながら、2013年より「歯と口の健康週間」となって、現在まで続いています。
また、日本歯科医師会は「2040年を見据えた歯科ビジョン」を立てて、さまざまな取り組みを計画しています。
こうした活動が、子どもと保護者の予防意識を向上し、有病率の減少に貢献したと考えられます。
そして、今後の有病率の減少に貢献することも期待できます。
1928年から1938年まで日本歯科医師会が実施していた6月4日に「虫歯予防デー」は、その後「護歯日」、「口腔衛生週間」など名称を変更しながら、2013年より「歯と口の健康週間」となって、現在まで続いています。
また、日本歯科医師会は「2040年を見据えた歯科ビジョン」を立てて、さまざまな取り組みを計画しています。
こうした活動が、子どもと保護者の予防意識を向上し、有病率の減少に貢献したと考えられます。
そして、今後の有病率の減少に貢献することも期待できます。
昔と今の主要なむし歯の原因の違い
昔と比べて、現在のむし歯の原因は変わってきました。むし歯の要因のさまざまな違いについてご紹介します。
口にしている飲食物の種類
むし歯は、産業革命(1850年代)の頃、砂糖や精製小麦粉の普及により本格的に広がったとされています。 そして現代では、そのときと比べ、さらにむし歯になりやすいさまざまな食べ物や飲み物を摂取しています。主な特徴として、糖分が多い、酸性が強い、粘着性が高い食品になります。
例えば、キャンディ・アメ・キャラメル・チョコレート・ケーキやクッキーなどが挙げられます。これらの食品は砂糖を多く含み、長時間口の中に残る、歯に付着しやすいといった特徴からむし歯のリスクを高めます。
酸性の食品も、酸が歯のエナメル質を直接溶かしてしまうためむし歯の原因になります。例えば、炭酸飲料やフルーツジュースがあります。
日本食は理想的な栄養バランスとされてきた一方、若者を中心に洋食やファストフードへの依存が進んでいます。少子高齢化に伴い、家庭での食事が減少し、外食が増加していることで、栄養を気にせず、むし歯のリスクを高める食品の摂取が増えたとも考えられます。
例えば、キャンディ・アメ・キャラメル・チョコレート・ケーキやクッキーなどが挙げられます。これらの食品は砂糖を多く含み、長時間口の中に残る、歯に付着しやすいといった特徴からむし歯のリスクを高めます。
酸性の食品も、酸が歯のエナメル質を直接溶かしてしまうためむし歯の原因になります。例えば、炭酸飲料やフルーツジュースがあります。
日本食は理想的な栄養バランスとされてきた一方、若者を中心に洋食やファストフードへの依存が進んでいます。少子高齢化に伴い、家庭での食事が減少し、外食が増加していることで、栄養を気にせず、むし歯のリスクを高める食品の摂取が増えたとも考えられます。
食事の食べ方・時間帯などの違い
間食や夜食、だらだら食べる習慣は現代によく見られ、むし歯のリスクを高めます。食事の間隔が短いと、口内が酸性の状態が続き、歯の再石灰化する時間が不足します。また、就寝前の飲食は、唾液の分泌が少なくなる睡眠中にむし歯菌が活発になってしまいます。
甘く酸味のある飲み物を頻繁に飲む、少しずつ長時間かけて飲むといった習慣も、歯を酸性環境に長時間さらすことになります。ペットボトルの飲み物を一日中少しずつ飲む、炭酸飲料や酸性の飲み物を頻繁に飲むといった習慣は、むし歯リスクを高めます。
また、現代人によく見られる朝食を抜く習慣もむし歯につながるとされています。自律神経による唾液の分泌量、質が変化するためむし歯になりやすいと考えられています。
これらの習慣の背景には、核家族化、女性の社会進出、夜型の生活、運動不足などライフスタイルの変化が考えられます。仕事や家事の忙しさで不規則な食生活を送る人が多いと思われます。
甘く酸味のある飲み物を頻繁に飲む、少しずつ長時間かけて飲むといった習慣も、歯を酸性環境に長時間さらすことになります。ペットボトルの飲み物を一日中少しずつ飲む、炭酸飲料や酸性の飲み物を頻繁に飲むといった習慣は、むし歯リスクを高めます。
また、現代人によく見られる朝食を抜く習慣もむし歯につながるとされています。自律神経による唾液の分泌量、質が変化するためむし歯になりやすいと考えられています。
これらの習慣の背景には、核家族化、女性の社会進出、夜型の生活、運動不足などライフスタイルの変化が考えられます。仕事や家事の忙しさで不規則な食生活を送る人が多いと思われます。
オーラルケアの仕方の違い
1980年代は、オーラルケアの転換期とされています。それまで研磨剤による「白い歯」をコンセプトにしていたオーラルケア市場に、「歯垢を分解」「歯間を清掃」「再石灰化」「歯周病予防」などのさまざまな機能を備えた歯磨き粉や歯ブラシ、洗口液などのオーラルケアグッズが登場しました。
1990年代にはマウスウォッシュの利用習慣が定着し、従来のむし歯予防に加えて歯周病ケア、美白、知覚過敏ケアなどの効果をうたった歯磨き粉も販売されはじめました。
歯周病や知覚過敏が注目され、オーラルケアへの関心が高まったと考えられます。
1990年代にはマウスウォッシュの利用習慣が定着し、従来のむし歯予防に加えて歯周病ケア、美白、知覚過敏ケアなどの効果をうたった歯磨き粉も販売されはじめました。
歯周病や知覚過敏が注目され、オーラルケアへの関心が高まったと考えられます。
最新むし歯研究でわかった新たな原因
むし歯の原因はミュータンス菌と考えられてきましたが、最近の研究ではさまざまな要因が分かってきました。
口内フローラ
口内にミュータンス菌がいると必ずむし歯になるわけではありません。ミュータンス菌の有無が問題なのではなく、口内の細菌全体のバランスが崩れることが原因だと近年の研究で判明してきました。
口の中には、数百種類もの細菌がバランスを取りながら共存していることを口内フローラと呼びます。健康な状態では、これらの細菌は悪い働きはしません。しかし、砂糖を頻繁に摂取したり、歯磨きが不十分だったりして口内環境が酸性に傾きバランスが崩れると、酸を作る菌が優勢になり、むし歯ができてしまうのです。
口の中には、数百種類もの細菌がバランスを取りながら共存していることを口内フローラと呼びます。健康な状態では、これらの細菌は悪い働きはしません。しかし、砂糖を頻繁に摂取したり、歯磨きが不十分だったりして口内環境が酸性に傾きバランスが崩れると、酸を作る菌が優勢になり、むし歯ができてしまうのです。
唾液の質や量
唾液には、食べかすや細菌を洗い流す洗浄作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用、酸に抵抗して中和させようとする緩衝作用などがあります。
唾液にはサラサラの唾液とネバネバの唾液の2種類があります。サラサラした唾液で分泌される量が多いと、むし歯になりにくく、逆にネバネバの唾液で量が少ないとむし歯になりやすいとされています。
唾液の質や量に影響する要素として、加齢やストレス、糖尿病などの病気、生活習慣などが挙げられます。
唾液にはサラサラの唾液とネバネバの唾液の2種類があります。サラサラした唾液で分泌される量が多いと、むし歯になりにくく、逆にネバネバの唾液で量が少ないとむし歯になりやすいとされています。
唾液の質や量に影響する要素として、加齢やストレス、糖尿病などの病気、生活習慣などが挙げられます。
最新のむし歯予防・治療に用いられる成分
歯科技術の進化により、むし歯予防の方法は多岐にわたっています。
例えば、フッ素塗布やシーラント処置など、歯の表面に直接薬剤を塗る方法があります。
最新のむし歯予防・治療に用いられる成分として、バイオアクティブマテリアルが注目されています。S-PRGフィラーやCPP-ACPなどの成分は、歯の再石灰化を促進し、むし歯の進行を抑制する効果があるといわれています。バイオアクティブマテリアルと予防ケアやデジタル技術を組み合わせることで、より効果的なむし歯予防と治療を可能にすると期待されています。
例えば、フッ素塗布やシーラント処置など、歯の表面に直接薬剤を塗る方法があります。
最新のむし歯予防・治療に用いられる成分として、バイオアクティブマテリアルが注目されています。S-PRGフィラーやCPP-ACPなどの成分は、歯の再石灰化を促進し、むし歯の進行を抑制する効果があるといわれています。バイオアクティブマテリアルと予防ケアやデジタル技術を組み合わせることで、より効果的なむし歯予防と治療を可能にすると期待されています。
現代のむし歯予防に欠かせないポイント
むし歯の原因が変化したことで、どのような予防が効果的なのかをご紹介します。
ライフスタイルの多様化や多忙を踏まえたこまめなオーラルケア
むし歯予防の基本は、食べたら磨くことを習慣化することです。歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の間は歯垢(プラーク)が残りやすいため、デンタルフロスや歯間ブラシを使って汚れを除去します。
時間がない人でも、朝晩に最低3分間はブラッシングするようにしましょう。電動歯ブラシを使うことで、短時間でも効果的に歯垢を除去できます。
時間がない人でも、朝晩に最低3分間はブラッシングするようにしましょう。電動歯ブラシを使うことで、短時間でも効果的に歯垢を除去できます。
ストレス・睡眠不足の影響と対策
不規則な生活、睡眠不足などによって免疫力が低下すると、細菌への抵抗力が弱まりむし歯のリスクが高まります。ストレスで交感神経が活発になると、唾液はネバネバして自浄作用が発揮されなくなります。
睡眠時間をしっかり確保し、ストレスをため込まないように、「適度に運動する」「音楽を聴く」などの自分に合った解消方法を見つけましょう。
睡眠時間をしっかり確保し、ストレスをため込まないように、「適度に運動する」「音楽を聴く」などの自分に合った解消方法を見つけましょう。
食習慣の変化に合わせた改善
忙しい人は早食いになりがちですが、唾液の分泌が促進されるように、よく噛んで食べることを意識しましょう。頻繁に間食する、だらだら食べるなどの習慣もむし歯になりやすくなるため、間食も時間を決めることが大事です。
歯科の定期検診を受ける
歯科医院はむし歯の治療のためだけでなく、予防として定期検診を受けることも大切です。
特に現代の多様なライフスタイルのなかでは、セルフケアだけで自分に最適なオーラルケアを行うことは難しいです。定期的にプロのアドバイスとクリーニングを受けることが、むし歯のリスクを抑えるために必要になります。
特に現代の多様なライフスタイルのなかでは、セルフケアだけで自分に最適なオーラルケアを行うことは難しいです。定期的にプロのアドバイスとクリーニングを受けることが、むし歯のリスクを抑えるために必要になります。
進化したオーラルケアの紹介と取り入れ方
最近では、技術の進歩によりオーラルケアグッズも進化をしています。
ここでは、アプリと連動した進化したさまざまなオーラルケアの方法があります。
ここでは、アプリと連動した進化したさまざまなオーラルケアの方法があります。
ブラウンオーラルB(電動歯ブラシ)
電動で磨けるだけでなく、アプリと連動し、磨いている箇所をリアルタイムで知らせてくれたり、歯の表面の外側・内側・噛み合わせ面まで立体的に検知したりできます。
クリニカアドバンテージNEXT STAGE ハブラシ
歯を強く磨くと歯ブラシのハンドル部分がしなり、最終的には「カチッ」と音が鳴る仕組みの歯ブラシです。強すぎる歯磨きによって、歯ぐきが下がり、知覚過敏につながるのを防ぎます。
シルハ(口内環境チェック)
水で10秒口をすすぐだけで口内環境をチェックすることができます。口内環境に関する6つの指標を検査し、専門家から結果に応じたアドバイスがもらえます。
現代のむし歯の原因を把握してむし歯予防しましょう
むし歯の原因は時代とともに変化してきました。現代のライフスタイルや食生活などさまざまな変化が要因として考えられます。むし歯の原因は遺伝的な原因や、生活習慣がどこまで影響するかなど不明確なこともありますが、まずはできることを実践するのが大切です。
普段の生活でむし歯のリスクを高めることがないかチェックし、むし歯予防に効果的な対策を取り入れてみてはいかがでしょうか。
普段の生活でむし歯のリスクを高めることがないかチェックし、むし歯予防に効果的な対策を取り入れてみてはいかがでしょうか。