(2022年10月14日更新)
歯間ケアをした後のデンタルフロスが臭い場合、歯周病やむし歯など、口内の病気が関係しているおそれがあります。そのまま放置していると、病気が進行したり、口臭がひどくなったりという影響が出ることもあります。この記事では、使用後のフロスから悪臭がする原因や、病気のサイン、フロスが臭い状態を放置したらどうなるのかを解説します。ニオイを改善する対処法もご紹介しますので、オーラルケアをする際の参考にしてみてくださいね。
使用後のフロスが臭い時に考えられる原因3つ
使用した後のフロスのニオイを嗅いだ時に、臭いと感じることがないでしょうか。その原因は、主に口内の細菌が関係しています。まずは、使用後のフロスが臭くなる原因について見ていきましょう。
1. 歯間に食べカスや歯垢が残っている
使った後のフロスが臭くなるのは、歯間に残っている食べカスや、細菌のかたまりである「歯垢」(プラーク)が原因の1つです。歯垢1gあたり1,000億個以上にも及ぶ多くの細菌が住み着いているため、細菌が発するニオイや食べかすがフロスについてしまい、臭くなるのです。
2. むし歯や歯周病がある
むし歯によって歯に穴が開くと、そこに食べカスが詰まったり、細菌が繁殖したりして、ニオイが強くなってしまいます。また、むし歯が神経にまで達していると、強烈なニオイを発することもあります。
歯周病がある場合は、食べ物が腐敗したようなニオイが特徴です。また、歯周病が進行すると、歯ぐきが炎症を起こして膿がたまることがあります。この状態になると、フロスを使用した際に出血して、血液と膿が混ざったものがフロスについて、ニオイがします。
出血する原因は、歯ぐきに炎症が起きているからです。フロスを使い続けることで、歯の周りがキレイになって炎症が起きづらくなり、いずれは出血が無くなるはずですが、2週間、3週間と出血が続く場合は、歯周病が進行していることも考えられます。また、むし歯により歯が溶けて凹凸ができていることで、フロスが引っかかったり切れたりすることもあります。
2週間以上同じ場所をケアしているのにニオイが改善されない場合は、むし歯や歯周病になっているかもしれません。
歯周病の検査や治療法については、あわせてこちらの記事もご覧ください。
3. 被せた金属が劣化している
進行したむし歯の治療では、神経を取り除いた歯を補強するために金属の被せ物をします。その金属が劣化すると歯と金属の間に隙間ができます。そこに汚れや歯垢がたまりやすくなることも、ニオイの原因の1つです。
また、被せ物を接着する際に使われるセメントが溶けだすことでも隙間ができます。そこに細菌が入り込んでむし歯が再発すると、ニオイの原因になってしまいます。
フロスが使用後に臭くなる状態を放置すると?
フロスが臭くなる口内の箇所を放置すると、歯の状況が悪化してしまうかもしれません。放置した場合に考えられる状況を見ていきましょう。
むし歯や歯周病が悪化する
フロスが臭くなる原因がむし歯や歯周病の場合、放置していると細菌がたまり、悪化してしまいます。また、むし歯が神経にまで進行すると、強烈な痛みを伴うこともあります。さらに進行した場合、歯がボロボロになり抜けてしまったり、周りの歯へむし歯が広がったりすることもあるため、早めの治療を心がけましょう。また、初期の歯周病はあまり痛みを伴わないため、気がつかないうちに進行していることが多いです。そのまま放置すると、歯の根元に歯石が付着していき、最終的には歯を支えている土台である骨が溶かされて、歯が抜け落ちてしまうこともあります。
口臭がひどくなる
使用後のフロスのニオイが臭い場合は、口内の細菌が悪臭を放出している場合があり、口臭も発生しているおそれがあります。また、放置することで口内に細菌が増えて、むし歯や歯周病が悪化して化膿や出血が起こり、さらに口臭がひどくなってしまうかもしれません。
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)になる
むし歯が進行すると、歯根の周囲組織が炎症する「根尖性歯周炎」を引き起こすこともあります。急に悪化することは少ないですが、根尖性歯周炎になると、内部の感染した歯髄や細菌を取り除き、消毒して炎症を抑える「根管治療」をしなければ治りません。
根尖性歯周炎を放置すると、激しい痛みを伴い、歯ぐきや顔が腫れたり、歯ぐきから炎症部分に溜まった膿が出たりすることもあります。膿が歯周ポケットに出る場合は、歯周病もひどくなっています。
使用後のフロスが臭い時にできる対処法
使用した後のフロスが臭い時、フロスでケアした部分に何も処置をせずにいると、口の中の状況が悪化するおそれがあるため、早目に対処することが望ましいです。ここでは、使用後のフロスが臭い時の対処法をご紹介します。
歯磨きを正しく行う
ニオイを改善するには、原因と考えられる歯垢をためないように、毎日の歯磨きを正しくすることが大切です。歯磨きは毎食後に行いましょう。歯ブラシはペンを持つように握り、45度ぐらいの角度で歯に当てます。手に力を入れすぎず、小刻みに横方向へ動かしてブラッシングしましょう。
正しい歯磨きの方法については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
歯の場所にあったフロスや歯間ブラシを使う
フロスは、歯ブラシだけでは取りづらい、歯と歯の間に詰まった歯垢を効率よく取り除くことができます。また、歯と歯の隣り合った面と、その歯周ポケット内の歯垢も除去することができます。このように、歯ブラシが届かない場所の細菌を取り除くのが、フロスの役割です。
柄のついたホルダータイプのフロスには、F字型とY字型があります。F字型のみ使用すると、場所によっては歯垢が残ってしまうこともあります。前歯にはF字型、前歯と奥の歯の両方に使う場合はY字型といったように、場所ごとに使い分けると良いでしょう。
ロールタイプのフロスは、前歯や奥歯、歯並びが悪い場所でも使えますが、使い方に慣れる必要があります。使い方が難しいと感じる場合は、歯科衛生士や歯科医師に相談してみてください。
デンタルフロスの種類や正しい使い方、よくある疑問については、こちらの記事をあわせてご覧ください。
また、歯間ブラシも併用すると歯と歯ぐきの間の歯垢除去率が上がります。フロスに加えて歯間ブラシを使った方がより効果的です。
歯間ブラシの効果や使い方については、こちらの記事もご参照ください。
マウスウォッシュを使用する
歯磨きやデンタルフロスなどで食べカスや歯垢を落とした後は、マウスウォッシュで口をすすぎましょう。細菌の増殖を抑えるために、殺菌成分を含むマウスウォッシュの使用をおすすめします。
マウスウォッシュの選び方や正しい使い方については、こちらの記事をご覧ください。
それでもフロスがニオう場合は歯科医院を受診
毎日歯ブラシをしたり、マウスウォッシュでこまめなケアを2、3週間続けてみたりしても使用済みフロスのニオイが取れない場合は、むし歯や歯周病などの病気が疑われるため、早めに歯科医院で治療しましょう。また、歯と被せた金属との間に隙間があることで、その隙間に汚れや歯垢が付着してしまい、ニオイが発生している場合もあります。その場合も歯科医院での処置が必要です。
3~4か月に一度程度、定期的に歯石を取り除くクリーニングや、歯磨き・フロスの使い方のアドバイスと合わせて、唾液検査による口内環境のチェックをおすすめします。歯科医院での定期健診で、セルフケアでは取り切れない、歯周ポケットの深い部分をクリーニングしてもらいましょう。定期検診を習慣づけて、むし歯や歯周病を初期段階で発見できれば、痛みを伴うことが少なく、治療にかかる費用や時間を抑えることができます。
フロスが臭い原因は唾液検査シルハでチェック
測定項目 |
わかること |
むし歯菌 |
むし歯の元となるむし歯原因菌の活性度 |
酸性度 |
歯を溶かしてしまう酸の強さ |
緩衝能 |
酸性になった口の中を中性に戻す力の強さ |
白血球 |
菌の繁殖などにより生じた炎症の度合い |
タンパク質 |
出血などの口のトラブルや細菌の繁殖 |
アンモニア |
口内の清潔度 |
自身の口内環境チェックにおすすめなのが、唾液検査シルハです。むし歯菌の活性度や歯周病判断の目安となる白血球・タンパク質、口内の清潔度がわかるアンモニアなど、6項目がチェックできます。これらの検査結果をむし歯や歯周病、口臭予防に役立てることができます。
シルハを導入している検査機関は、こちらからご確認ください。
フロスが臭いと感じたら歯科受診を
毎日ケアをしているのに、歯間ケアをした後のフロスがニオう場合は、むし歯や歯周病などの病気が潜んでいるおそれがあります。病気のサインを見逃さずに、早めに歯科医院を受診しましょう。また、定期的に口内環境をチェックして、正しい歯磨きや、フロスの使い方などもアドバイスしてもらって、歯の健康を維持してくださいね。
監修歯科医師:吉竹啓介先生
東京都中央区京橋駅直結の「京橋 銀座みらい歯科」院長。
2010年神奈川歯科大学 卒業。2014年に医療法人社団港成会 理事に就任し、同年にせたがや歯科室を開設。2020年に京橋 銀座みらい歯科を開設し、翌年移転・名称変更。現在は京橋 銀座みらい歯科として東京スクエアガーデン2Fで診療を行っている。
京橋 銀座みらい歯科のホームページはこちら
https://www.miraishika-ginzain.tokyo/