(2022年10月14日更新)
自分では気を付けているつもりでも、無意識に口が開いてしまうことに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。その原因は、アデノイド顔貌の影響かもしれません。アデノイド顔貌(がんぼう)とは、上顎が出て下顎が後退している顔のことです。10代で自然に治ることが多いですが、大人になっても口呼吸などの原因で影響の残る人がいるようです。この記事では、アデノイド顔貌の概要や原因、解消法、治療法などをご紹介します。
アデノイド顔貌の特徴とセルフチェック 出っ歯(口ゴボ)とは何が違う?
アデノイド顔貌とは、口がポカンと開いた面長の顔を指します。通常は10代で自然に治りますが、大人になっても残ってしまう場合があります。まずはアデノイド顔貌の特徴やセルフチェック、さらにアデノイド顔貌に似た出っ歯(口ゴボ)との違いを解説します。
アデノイド顔貌の特徴
アデノイド顔貌の方は、顔つきに共通した特徴が見られることが多いようです。
<特徴>
- 口がぽかんと開いている
- 唇が突出している
- 顎が小さく首との境目が緩やか
- 鼻がやや上を向いている
- 面長
ほかにも、鼻声、いびきや鼻詰まりが恒常的に起きているという特徴も挙げられます。
アデノイド顔貌のセルフチェック
アデノイド顔貌の方は、理想的な横顔の基準といわれている「Eライン」になりません。ご自身が「Eライン」の基準を満たしているかどうかは、以下の方法でチェックしてみましょう。
- 鼻の頭と下顎の先に人差し指を置く。
- 唇が人差し指に触れるかを確認する。
唇が人差し指に唇が少し触れる程度、もしくは触れない場合は、Eラインがあるといえます。しかし、Eラインは欧米人に基づいた基準であり、Eラインの基準に満たない方すべてが、アデノイド顔貌ということではありません。
アデノイド顔貌と出っ歯(口ゴボ)との違い
アデノイド顔貌の方と同様に、出っ歯の方にもEラインがありません。両者で異なる点は、下顎の位置です。上下の唇が突き出ていても、出っ歯(口ゴボ)の場合は下顎が正常な位置にあり、アデノイド顔貌の場合は下顎が後退しています。また、出っ歯(口ゴボ)に比べてアデノイド顔貌は鼻先がやや下がっている傾向にあることも違いの一つです。
出っ歯(口ゴボ)については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
アデノイド顔貌の原因は?
ここでは、アデノイド顔貌になる原因について解説します。ご自身にあてはまる項目がないかどうか、チェックしてみてください。
原因① アデノイド肥大
「アデノイド」とは、「咽頭扁桃(いんとうへんとう)」とも呼ばれるリンパ組織のことです。鼻から喉につながる部分にあり、扁桃腺と同じように、細菌やウイルスが体内に入ることを防ぐ役割を担っています。このアデノイドが何らかの原因で大きく腫れることで、口周りをはじめとした顔つきに影響が出てしまうのが「アデノイド顔貌」です。
多くは、免疫力の低い10歳ごろまでの子どもに見られます。大人になるにつれて免疫力が高くなると、次第に小さくなるケースがほとんどですが、まれに成長してもアデノイドが肥大化したままになることがあります。
原因② 口呼吸
口呼吸が癖づいていることで、下顎骨の筋肉が付きにくく、顎骨も成長しなくなる場合があります。それによって、口の中での舌の位置や動かし方に変な癖がついて、アデノイド顔貌になってしまう方もいます。口呼吸は、アデノイドが肥大化する原因とも言われています。フィルター機能がない口で呼吸をすることで、細菌やウイルスが、体内に直接入り込みやすくなり腫れを引き起こすからです。
口呼吸のリスクに関しては、以下の記事でも解説しています。
アデノイド顔貌の影響
アデノイド顔貌による影響は、見た目の変化だけではなく、いびきや口臭などに及ぶケースもあります。場合によっては睡眠時無呼吸症候群などにつながることがあるため、気になる方は医療機関での対処をおすすめします。
影響① 見た目が気になる
アデノイド顔貌により下顎が後退することで、顎と首の境目が分かりづらくなったり、顔が大きく見えてしまったりすることがあります。また、アデノイド顔貌の横顔は「Eライン」に該当しないため、コンプレックスに感じる場合もあるかもしれません。
「Eライン」は欧米人に基づく理想の横顔の基準です。そのため、アジア人にとっての理想とは限らず、もともとアジア人は該当しない人が多いです。
影響② いびきにつながる
アデノイドが肥大していると、鼻の奥がふさがれるため、鼻呼吸がうまくできず、就寝時にいびきをかくケースがあります。風邪や花粉症、鼻炎などが原因で一時的にいびきをかくものとは異なり、いびきの音が大きくなる場合が多いようです。また、いびきは睡眠中に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群にもつながります。
影響③ 鼻詰まりになりやすい
アデノイドが大きいと、空気の通り道が狭くなるため、慢性的な鼻詰まりになりやすいです。鼻の中に異常がないにもかかわらず鼻詰まりがある場合は、アデノイドが肥大していることが考えられます。
影響④ 口臭につながる
アデノイドが肥大すると鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸になりがちです。口呼吸は、唾液の分泌量減少に伴い、口の中が乾いた状態になる「ドライマウス」を引き起こします。ドライマウスになると、唾液による自浄作用が失われます。その結果、口の中の細菌が増えて、口臭が強くなってしまいます。
病院に受診する必要がある治療法
子どもの場合、アデノイド顔貌は成長の過程において治していくこともできます。しかし、大人になると自然治癒は難しくなってきます。そのため、症状に合わせて歯科、耳鼻咽喉科、形成外科などの医療機関を受診した上で、自分に合う治療を受けることが大切です。鼻炎などの耳鼻咽喉症状がある場合は耳鼻咽喉科を、その他の場合は歯科医院を受診しましょう。
アデノイド肥大の大きさや重度は、自分で確認することはできません。耳鼻咽喉科などで診てもらいましょう。
アデノイド肥大がある:投薬治療や摘出手術を行う
アデノイド肥大(咽頭扁桃)がある場合は、アデノイド顔貌の原因になっているおそれがあります。また、アデノイドが肥大していることにより口呼吸も引き起こされて、症状をさらに助長している場合もあります。アデノイド肥大は、耳鼻咽喉科で治療をしましょう。軽度の場合は、点鼻薬や抗生剤を使った治療が行われます。アデノイドが極端に大きく腫れていて気道を塞いでいる場合は、摘出手術を行うこともあります。
鼻詰まりが原因で口呼吸をしている:鼻炎の治療を行う
アレルギー性鼻炎の場合は、薬物療法や免疫療法、鼻の粘膜をレーザーで凝固する手術療法などが行われます。その他にも、鼻炎の原因となっているものを排除することも大切です。ホコリやダニが原因でアレルギー性鼻炎の症状が出ている方は、生活環境を整えましょう。
軽度のアデノイド顔貌の場合:歯列矯正をする
中学生以降になると顎の成長が止まるため、口呼吸の対策だけではアデノイド顔貌を改善することが難しいケースもあります。アデノイドの肥大が小さく軽度(肥大が小さめ)のアデノイド顔貌の場合は、歯列矯正が効果的です。歯列が拡大すると鼻腔も拡大するため、鼻呼吸へ誘導しやすくなります。
歯列矯正について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
アデノイド顔貌が重度の場合:外科手術が有効なことも
歯列矯正でもアデノイド顔貌が改善されず、滲出性中耳炎(難聴)や、副鼻腔炎に繰り返しなってしまう、睡眠時呼吸障害が激しいなどの場合は、アデノイド肥大が大きい可能性があり、治療には骨格を修正するための外科手術が必要です。一定の基準などはありませんが、肥大の大きさは耳鼻科などで確認することができます。外科手術は、症状に合わせたさまざまな種類があります。自分に合った外科手術を受けることで、重度のアデノイド顔貌も改善できるでしょう。
ただし、手術の種類によっては美容整形の範疇になるため、治療費用が数百万円になってしまう恐れがあります。また、手術は体への負担も大きくなるので、主治医とよく話し合って決めることをおすすめします。
自宅でできる改善方法
アデノイド顔貌を改善するためには、まずは口呼吸を鼻呼吸に変えていくことが重要です。鼻呼吸に変えていく方法は、自宅でできるものも多くあります。
口呼吸のセルフチェック
まずはご自分が口呼吸をしているかチェックしてみましょう。以下のチェックリストで該当するものが多ければ多いほど、口呼吸をしている可能性が高いと考えられます。その上で、自宅で手軽に行えるアデノイド顔貌の改善方法を確認してみましょう。
<口呼吸セルフチェックリスト>
- 無意識のうちにくちが半開きになる
- 口内炎ができやすい
- 歯並びが悪い
- 租借時に音を立てる
- 唇が乾燥・荒れやすい
- 起床時、のどが痛い
- 活舌が悪い
- 食べる速度が速い
- 口の中が乾きやすい
- 鼻づまりがある
- 寝ている間によだれが出ている
ガムを噛んで鼻呼吸を意識する
口呼吸のセルフチェックを実施して当てはまる場合には、鼻呼吸することを意識しましょう。鼻呼吸への改善法の一つには、ガムを噛むことが効果的です。ガムを噛むことで口が閉じるため、自然に鼻呼吸をするようになります。また、口の筋肉も鍛えられるので、口が自然に閉じられるようにもなります。
就寝時は口に専用のテープを貼る
就寝時、口に鼻呼吸を誘導するための専用のマウステープを貼ることも効果があります。マウステープで口を物理的に塞ぐことで、口呼吸をしにくくし、鼻呼吸を促します。マウステープは薬局や薬店、スーパー、ホームセンターなどで購入できます。
マウステープは、唇の中央部分に縦にして貼りましょう。このとき、口全体をテープで覆わないように気を付けましょう。また、鼻に疾患がある方は呼吸ができなくなる恐れがあるため、この対処法は向きません。
「あいうべ体操」をする
口呼吸から鼻呼吸へ改善するためにおすすめの方法の一つに、「あいうべ体操」と呼ばれる口の体操があります
<あいうべ体操>
- 口を大きく開き、「あー」と発声する
- 口を横に大きく開き、「いー」と発声する。
- 唇を前に突き出し、「うー」と発声する。
- 舌を下に突き出し、「ベー」と発声する。
「あいうべ体操」以外にも、口呼吸の改善に役立つトレーニング方法があります。以下の記事でまとめていますのでチェックしてみてください。
自分に合う治療方法を見つけて改善しよう
アデノイド顔貌の主な原因の一つは、口呼吸が習慣化してしまうことです。気になる場合は、まず口呼吸をしていないかを確認してみましょう。そして、自宅でできる対策を取り入れつつ、耳鼻咽喉科や歯科などの医療機関を受診しましょう。自分に適した治療を受けることで、きっと今よりも改善されるはずです。また、1人で悩みを抱えずに医師に相談することで、心がスッと軽くなるかもしれません。
定期的に歯科医院を受診して口元を確認してもらおう
アデノイド顔貌の相談や治療で歯科医院に足を運んだ際には、あわせて定期検診も受けて、口内の状態をチェックしてもらいましょう。定期検診を受けることで、自分では気づけない口内の異常も発見することができます。
また、唾液検査シルハも一緒に受けてみてはいかがでしょうか。シルハは、水で10秒ほど口をすすぐだけで簡単に行える唾液検査です。むし歯菌の活性度、歯を溶かす酸の強さがわかる酸性度、酸に対する防御力の緩衝能、口内の炎症がわかる白血球、タンパク質の量、口内清潔度の指標となるアンモニアの6項目を検査・測定できます。口をすすぐだけなので、お子さんでも簡単に行えます。
ぜひ、こちらからシルハを導入している医療機関をチェックしてみてください。
監修歯科医師:吉竹啓介先生
東京都中央区京橋駅直結の「京橋 銀座みらい歯科」院長。
2010年神奈川歯科大学 卒業。2014年に医療法人社団港成会 理事に就任し、同年にせたがや歯科室を開設。2020年に京橋 銀座みらい歯科を開設し、翌年移転・名称変更。現在は京橋 銀座みらい歯科として東京スクエアガーデン2Fで診療を行っている。
京橋 銀座みらい歯科のホームページはこちら
https://www.miraishika-ginzain.tokyo/