(2023年7月27日更新)
【医師監修】
ある日、急に唇が腫れていて、痛みなどはないものの心配になったことはないでしょうか。 特に原因に覚えがない場合も、突然唇が腫れたときには体調に何らかの異変があることがあります。この記事では、急に唇が腫れたときの原因とそれぞれの対処法について紹介します。
急に唇が腫れる原因
唇が急に腫れてしまうと、常に口に違和感を覚えてしまい、人と会話がしづらいなど、日常的な不便を感じてしまいます。
食事中に唇を噛んでしまったときや傷ができてしまったときに唇が一時的に腫れることはありますが、特に身に覚えがないのに関わらず、唇が腫れてしまうこともあります。
その場合、症状や腫れの程度によって、いくつかの原因が考えられます。ここでは、急に唇が腫れる原因と対処法、注意しなければならない点を紹介します。
<唇をぶつけてしまって腫れている場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。>
1. アレルギー
まず考えられるのが、原因となる物質(アレルゲン)との接触によるアレルギー反応によって、唇に腫れやしびれが起こっている場合です。
アレルギーの症状
食べ物や化粧品、金属やアルコールなどが原因で、アレルギー反応が起こる場合があります。特にアレルギーが原因の場合、下唇が腫れるケースが多いです。また、唇が腫れた際にしびれや強いかゆみがあった場合は、アレルギーが原因の可能性が高いと考えられます。
普段はアレルギーが無いという方の場合、アレルギーが原因では無いと考えてしまうかもしれません。しかし、普段は接触しても問題がない物質であっても、ストレスや体調不良で免疫が低下しているときにアレルギー反応を生じることがあります。そのため、疲労で体力が低下しがちなときなどに腫れが起きた場合は、アレルギーが原因であることも考慮した方が良いでしょう。
アレルギーが原因の場合、症状が悪化すると呼吸困難や血圧低下を伴ったアナフィラキシーショックが発生するおそれがあります。
アレルギーの原因
アレルギーの症状は、食事や飲酒をしたり化粧品を使用したりしたときに、アレルゲンを体内に取り込むことで発生します。化粧品などの唇に直接触れるもの以外にも、歯の詰め物に使われる金属や特定の食品によるアレルギーなども考えられます。
食べ物が原因であった場合は、比較的短時間で症状が現れやすいです。症状が出たら直前に食べたものをチェックして、症状の原因となる物質を知る必要があります。
2. クインケ浮腫(血管性浮腫)
クインケ浮腫の症状
クインケ浮腫とは、蕁麻疹(じんましん)の一種で、瞼(まぶた)や唇など顔の一部が腫れる疾患です。発見者であるドイツ人医師の名からこの名前が付けられており、「血管性浮腫」とも呼ばれています。腫れ方には個人差があり、唇の一部分のみ腫れる場合もあれば、唇全体が大きく膨れ上がってしまう場合もあります。
特に痛みや痒みはなく、ただ腫れが生じている場合は、クインケ浮腫が考えられます。
クインケ浮腫の場合、腫れは数時間程度で引きはじめます。大抵の場合、数日ほど経つ頃には症状は治まります。
しかし、再発を繰り返す場合は、抗ヒスタミン剤を定期的に服用することにより症状を抑えることになります。それでも症状が治らない場合は、追加の検査などが必要になることあるため、医師に相談しましょう。
クインケ浮腫の原因
クインケ浮腫には、先天性と、後天性があります。
先天性のクインケ浮腫は、タンパク質の一種であるC1-インヒビターの遺伝子に変異がある場合などに発生します。成人する前に発症することが多いとされています。
後天性のクインケ浮腫は、アレルゲンとの接触や、外傷、温度差などの刺激が原因で発症します。また、後天性のクインケ浮腫も、ストレスや体調不良で免疫が低下しているときに症状が起こりやすくなっています。ただし、症状の原因が特定できない場合もあります。
アレルギー反応によるクインケ浮腫と、アレルギー反応による唇の腫れとの違う点は、症状の出方です。クインケ浮腫は蕁麻疹の1種です。そして、蕁麻疹は皮膚の浅い部位で起こるのに対して、クインケ浮腫は皮膚の深い部位で起きる反応という違いがあります。
3. 肉芽腫性口唇炎(にくげしゅせいこうしんえん)
急に唇が腫れてゴムのように固くなったり、舌や顔面に麻痺したような症状を感じたりしたときは、肉芽腫性口唇炎の疑いがあります。
肉芽腫性口唇炎の症状
肉芽腫性口唇炎とは、慢性的に唇に腫れが生じる疾患です。
症状には突発的な唇の腫れがあり、他に顔の神経の麻痺や顔の腫れ、溝状舌(舌に多数の溝ができる症状)を併発する場合があります。唇に痛みはほとんどなく、腫れは上唇に発生するケースが多いです。発生するのは成人の場合が多く、子どもの発症は少ないとされています。
肉芽腫性口唇炎は再発を繰り返す場合が多いです。何度も唇の腫れを起こす場合は病院で詳細な検査を行う必要があります。
肉芽腫性口唇炎の原因
肉芽腫性口唇炎の原因は、まだ不明な点が多いです。
原因として考えられているのは、むし歯や歯周病、扁桃炎などの口内の感染症のほか、歯科の治療で詰め物として利用した歯科用金属によるアレルギーなどです。歯科用金属アレルギーが原因と考えられる場合はパッチテストを行い、どの金属に反応しているのかを確かめます。そして原因となる金属が判明した場合は、その原因となっている詰め物を取り替えるなどの対処を行います。
他にも遺伝的な要因や食物アレルギーなど、複数の要因が組み合わさっているとも推測されています。
<編集部からのおすすめ>
先述した急に唇が腫れる原因以外にも唇が腫れる原因はさまざまです。唇が腫れる原因と受診の目安についてまとめた記事もありますので、こちらの記事もおすすめです。
唇が腫れる原因は病気?症状と対処法、受診の目安を解説【歯科医師監修】
急に唇が腫れたときの対処法について
1. 腫れが引かず、痛み・水ぶくれ・発疹が現れる場合
数日経っても腫れが引かず、痛みや水ぶくれ、発疹が生じた場合は、意識や呼吸に問題がなくても、なるべく早く皮膚科を受診することを検討してください。病院で検査を受けて、原因の特定と処置を行ってもらいましょう。
2. 何度も腫れたり治ったりを繰り返す
腫れが引いたり再発したりを繰り返す場合も、なるべく早く皮膚科を受診することをおすすめします。一時的なことではなく、なにかのアレルギーや病気が潜んでいるおそれもあります。
3. 呼吸や意識に問題が生じる場合
唇が腫れているだけでなく、呼吸困難や意識が朦朧とするといった症状を感じた場合は、すぐに病院を受診するか、救急車を呼んでください。
特にアレルゲンとの接触や食物アレルギーが原因であった場合、直後にアナフィラキシーショックが起こる危険性もあります。その場合は意識不明になるなど、症状が重症化する場合もあるので、「今までアレルギーになったことないから」と油断せずに、早急に対応してください。
4.冷却して様子を見る
自分でできる応急処置として、濡れタオルなどで患部を冷却する手段があります。患部を冷却することによって、痛みや痒みが緩和する場合があります。ただし冷やしすぎると血流が悪くなってしまうため、腫れの治癒が遅くなってしまう場合があります。
あくまで応急処置ですので、一向に症状が良くならない場合は病院で受診しましょう。
5.急に薬を塗らない
注意することとして、腫れの原因が判明しないときは、患部に塗り薬を塗ったり、炎症を抑える薬を飲んだりするのは控えましょう。原因を明らかにしないまま薬を飲むと、副作用や薬剤に対するアレルギー反応で、かえって症状が悪化してしまうおそれがあります。
薬を服用するのは、病院を受診して腫れの原因を特定してからにして、服用する薬も医師から処方された薬を使用しましょう。
急に唇が腫れるのを防ぐ日頃のケア方法
急な唇の腫れを予防するために、日頃から心がけたいケア方法について紹介します。
アレルゲンを回避する
急に唇が腫れる原因がアレルギーと考えられる場合は、アレルゲンの疑いがある物質を身の回りから無くし、身体と接触しないように心がけてください。
食べ物やアルコールがアレルギーの原因と判明している場合は、それらの食材を摂取しないように日頃から気をつけましょう。また、化粧品が原因の場合は、別の化粧品に取り替えるなどの対処が必要です。
自分や家族の誰かがアレルギーを持っている場合、あらかじめアレルゲンを記したメモなどを作成しておくと、記憶に残りやすく、外部の人にも情報を伝えやすくなるのでおすすめです。
過去にむし歯治療で使った銀歯や詰め物などが原因となって、アレルギーが発生する場合もあります。この場合、金属から溶け出した金属イオンが体内に吸収されることでアレルギーが発生するため、金属が溶けだして数年経ってから発症したケースもあります。
このように意外なものがアレルギーの原因となる場合もあります。アレルギーが原因と見られる症状が起こる場合は、病院で受診してアレルギーの原因を突き止めるようにしてください。その上で原因となる物質を回避するような対策を取りましょう。
栄養バランスの良い食事と休息をとる
一般的に、病気などの体の異常は、疲れやストレスが溜まって免疫が低下したときに起こりやすくなっています。唇の腫れの場合も同様です。
体調が優れないときは、十分に休息を取る、睡眠時間を確保するなど、身体をケアして免疫を回復するようにしてください。
そして免疫を維持するには、栄養バランスの良い食事も大切です。特にビタミンBは皮膚の代謝を促し、タンパク質は皮膚を構成する栄養素です。これらの栄養素を十分に摂ることは、唇の腫れの予防に繋がります。
ビタミンBは肉(レバー類)や魚などのほか、卵や牛乳などの動物性の食品に多く含まれています。それらの食品を摂取することで、タンパク質と併せて十分な栄養素を摂取することができます。
口内環境を清潔にする
唇にできた傷口に雑菌が入り込んでできる腫れを防止するには、普段から口周りを清潔にしておくことが大切です。特に口内炎やむし歯などの口内環境が唇にも影響する場合があるため、唇周りだけでなく口内も清潔にしておくことが、唇の腫れの予防に繋がります。
毎日歯磨きやうがいなどをして雑菌が繁殖することを防止し、口内を清潔に保ちましょう。
まとめ
急に唇が腫れる原因はアレルギー反応など様々ですが、体力が落ちて免疫が低下しているときに発生しやすいです。日頃から健康の維持に努めて、アレルゲンの回避をすることが大切です。また、唇が腫れる場合には病気が潜んでいるおそれもあります。
もし突然唇が腫れたり、腫れが何度も繰り返したりするときは、病院で相談しましょう。その際には、腫れる前の行動や食べたもの、生活環境なども一緒に伝えておくと良いです。
監修医師:種田 研一 先生
平和台皮フ科 院長。
2004年に順天堂大学医学部を卒業後、同大学院にて研究を行ないながら皮膚科医療に従事。2014年からは種田医院に勤務し、2021年に現在の平和台皮フ科を開業。
日本皮膚科学会専門医として、審美性と機能性の両方を兼ね備えた治療の提供に努める。
平和台皮フ科 ホームページ
https://heiwadai-skin.clinic/