(2022年10月6日公開)
20代で現在むし歯がある、またはむし歯の経験がある方は8割を超えます。このコラムでは、20代でむし歯だらけになってしまった方や、既にむし歯になっていて歯が痛いけれど、怖くて歯科医院に行けない方に向けて、むし歯の対処法をご紹介します。今、むし歯だらけだからといって、あきらめるのはまだ早いです。今日からできる予防法についても解説します。
20代に入るとむし歯が増える理由
むし歯の有病率が高くなるのは、15歳あたりからです。さらに、20代になると8割以上の方にむし歯がある、あるいはむし歯の経験がある、という調査データがあります※。もはや、20代でむし歯があることは、決して珍しいことではないと言えるでしょう。この年代からむし歯の経験が増えるのは、15歳で義務教育を終えてライフスタイルが変わるのに合わせて、日常の食べ物が変化することや、オーラルケアがおろそかになりがちなことが影響しているのかもしれません。
※参考:厚生労働省 平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要 P.11
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf
むし歯を放置した場合のリスク
20代でむし歯があることは珍しくはありませんが、歯は一生ものの組織なので、早期に治療することが望ましいです。なぜなら、歯には自然治癒力がなく、むし歯を放置するとますます悪化してしまうからです。今現在は痛みを感じていない方でも、放っておくと将来、長期間に及ぶ治療が必要となるかもしれません。また、場合によっては治療費が高額になったり、総入れ歯になったりしてしまうことも考えられます。
口臭の原因になる
むし歯を放置しておくと、「むし歯の穴に入り込み腐敗した食べカス」や「腐敗した歯の神経」、「歯根にたまった膿」がニオイを発して、口臭につながります。口臭の原因は胃腸によるものだと思われがちですが、90%は口の中に原因があると言われています。
口臭がしているかのチェック方法や口臭の予防・解消法についてはこちらの記事も参考にしてください。
歯を抜かなければならない
むし歯が重度にまで進行すると、歯を残したまま感染部分を除去することができなくなります。そのままにしておくと、周りの歯にも感染が波及してしまう恐れがあるためです。そのため、該当の歯を抜くことで治療を行ないます。
歯を失った箇所は、歯の代わりとして「ブリッジ」、「部分入れ歯」、「総入れ歯」、「インプラント」のいずれかでカバーをすることができますが、上下のどちらかの顎に自分の歯がまったくない場合は「総入れ歯」しか選択肢がなくなります。また、抜歯をすることで噛み合わせも悪くなってしまいます。
顔が腫れる・顔がゆがむ
歯の根本に膿が溜まると、歯ぐきだけでなく顔も腫れてしまうおそれがあります。また、噛み合わせが悪くなることで、顎骨から順にからだ中の骨が歪み、顔面自体が歪んでアンバランスな見た目になることもあります。
歯以外が病気になるおそれ
むし歯は、最悪の場合には、命を落とすこともある病気と言えます。顎にまで進行した口内細菌がさらに体内を巡り、「心筋梗塞」や「脳梗塞」を引き起こしてしまったという症例もあります。
高額な治療費がかかる
むし歯治療自体には保険が適用されますが、その治療費はむし歯の進行度によって1,000円〜2万円程度と、大きく変わってきます。
そして、インプラントやブリッジは保険適用外となるため治療費が高額になってしまいます。インプラントの場合は、1本あたり全国平均30万円~50万円となるようです。ブリッジの相場は、診察や治療費などを除くと1本あたり約5万円~15万円ほどです。
ブリッジはインプラントができない場合の治療法ですが、歯がない部分の両隣の健康な歯を削り、その上から連結した人工歯をかぶせることになります。健康な歯まで削る必要があるため、選択は慎重にしましょう。
インプラントや保険適用については、こちらの記事で詳しく解説しています。
治療期間が長くなる
むし歯の治療期間は、本数というよりもむし歯の進行度によって異なります。例えば、重度にまで進行したむし歯が多い場合、死んでしまった神経を取り除き、歯の根を洗浄・消毒した後に、患部に薬剤を詰める根管治療が必要になります。根管治療は1か月程度かかることもありますが、初期のむし歯であれば1日で終わることもあります。早期に対処する方が、苦痛は少なくて済むでしょう。
おいしく食べられない
むし歯になると、食べ物を嚙むときに痛みを感じるため、硬いものが食べられなくってしまいます。また、歯の表面にあるエナメル質が溶かされて、内部にある象牙質にまでむし歯が広がった状態では、冷たいものは歯にしみてしまい、食べにくくなることもあります。
痛みを感じたときには手遅れになってしまう
「歯が痛い」と感じたときには、既にむし歯がかなり進行しています。歯は再生できないため、むし歯となっている箇所を削り、詰め物をして埋めるしか方法がありません。治療をすれば痛みは治まりますが、一度この処置をした箇所はもろくなってしまうのが事実です。
削った箇所の詰め物は、日常生活の中で取れてしまうこともあるため、ケアが必要になります。治療をしたらそれで終わりではなく、メンテナンスも必要です。長い目で見ても、むし歯になってから治療するよりも、むし歯を予防する方がおすすめです。
歯医者に行くのが怖い! 実はメリットだらけの行くべき理由
むし歯を放置しておくのが危険であることはわかってはいても、歯科医院に行くこと自体が怖いという方も多くいらっしゃると思います。そこで本項では、むし歯の治療のために歯科医院に掛かった場合のメリットについて、むし歯を治すこと以外の視点からご紹介します。恐怖を乗り越えられる後押しになれれば幸いです。
歯を失うリスクを減らせる
むし歯を放置すればするほど、症状が悪化して、むし歯の本数も増えてしまいます。上下のどちらかの顎で自分の歯がすべてなくなってしまった場合は、総入れ歯にすることになります。そうなる前に早めに歯科医院を受診することで、自分の歯を残すことができるかもしれません。年齢を重ねても入れ歯が必要なければ、生涯自分の歯で、おいしく食事を楽しむことができます。
不快な症状の改善につながる
「歯が痛い」、「歯がしみる」といった不快な症状を、治療によって改善してもらうことができます。これらの症状は、歯科医院に行かない限り改善できないため、早めに対処してもらうのが得策です。
治療期間の短期化・治療費の削減につながる
むし歯は、発見が早ければ早いほど、短い期間で治療ができます。忙しいからといって後回しにしてしまうと、結局治療期間が長くなってしまいます。また、治療期間が短く済むということは、総合すると治療費の削減にもつながります。
むし歯を予防できる
そもそもむし歯は「予防」が肝心です。今は痛みがなくても、放置していたことでつらい治療を何か月も続けなければならなくなった、という人もいます。どんなに歯磨きが上手な人でも、きれいな状態を保ち続けるのは難しいと言われています。こまめに歯科医院で口内をチェックしてもらい、クリーニングしてもらいましょう。
定期検診として、3か月に1回ほどの頻度で受診することで、むし歯のリスクを減らして、予防につながります。
ワンランク上のオーラルケアができる
歯科医院では、ドラッグストアなどで市販されていないキシリトールガムや、歯ブラシなどのケア用品を購入することができます。歯科医師に症状や口内環境に合わせておすすめの商品を選んでもらえるうえに、使い方の説明やアドバイスもしてもらえるでしょう。自分ではできないワンランク上のオーラルケアにつながるので、積極的に相談してみてください。
口元の見た目をきれいに保てる
歯科医院に行くことをおすすめするのは、むし歯の治療だけが理由ではありません。治療以外にも、クリーニングで着色汚れを落としてもらったり、歯垢や歯石を除去してもらったりすることができます。口臭予防にもつながるほか、自分ではできない口内のケアをプロにやってもらうことで、口元をよりきれいに保つことができます。歯を含む見た目が気になっている方こそ、早めに歯科医院に行きましょう。
近年は無痛治療を取り入れる歯科医院も増えています。無痛治療について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
むし歯だらけの状態 今から自分でできることは?
歯科医院に行くメリットが分かったものの、それでも行く勇気が出ない方や、まずは自分でできることをしてみたいという方に、今日からできる対処法をご紹介します。
歯磨きができないときもうがいだけはする
本来は、毎食後に歯磨きをするのがベストです。しかし時間的に余裕がない、歯磨きをできないなどの場合は、うがいをする習慣をつけましょう。市販の洗口液(マウスウォッシュ)などを使うと、清涼感が得られ、口臭予防にもなります。食後はブクブクうがいをする、手を洗う際にはついでにうがいもする、など、できることから始めてみましょう。
マウスウォッシュの使用法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
キシリトールガムを噛む
キシリトールには歯を溶かす酸の機能を抑制する働きがあるため、ガムで手軽に摂取してみましょう。ただし、市販されているものよりも、歯科医院で販売されているものの方がキシリトールの配合量も多く、その他の糖分も抑えられているので、歯科医院で購入する方がベターです。ガムを噛むことで唾液の分泌が促されて、口内の自浄作用が促進されます。3か月以上継続して使用することで、口内のむし歯菌の数を減らすことができるとも言われています。
(参照:
https://www.jda.or.jp/park/prevent/xylitol_05.html)
キシリトールの働きについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
糖分の入っていない水分をこまめに摂る
水分をこまめに摂ることで、歯のくぼみなどに残る食べカスを流して、口の中を潤して、自浄作用のある唾液の分泌を促しましょう。むし歯を予防する水分としては、糖分が入っていない「水」が最適です。
糖分が入っていないお茶やコーヒーもNGではありませんが、これらに含まれているタンニンやポリフェノールなどの成分が歯に付着すると、歯の表面がザラザラになり、歯垢などが付きやすくなります。特に寝る前などにお茶やコーヒーを飲んだら、糖分が入っていないからといってそのままにせず、歯磨きやうがいをしましょう。
食べる時間と食べない時間のメリハリをつける
むし歯の原因は、口内に存在するむし歯原因菌(ミュータンス菌)の作る酸です。この酸が歯のカルシウムを溶かして、やがて歯に穴をあけてしまうのです。
唾液は、その細菌の作り出した酸を中和して洗い流したり、溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻してくれたり(再石灰化)します。また、次の食事までなるべく間隔を空けることで、歯の再石灰化を促しやすくなります。再石灰化を促進するには「フッ素」入りの歯磨き粉を使うこともおすすめです。
再石灰化について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
20代でむし歯だらけの人がやるべきこと まとめ
20代でむし歯だらけでも、まだまだ治療や改善の余地はあります。むし歯を放置しておくと、食べ物がおいしく食べられないだけでなく、最悪の場合、死に至る病にもつながってしまいます。歯科医院へ行くことに気が引けてしまうかもしれませんが、早期に行った分、得られるメリットは大きいです。どうしても病院に行けない場合は、むし歯の進行を少しでも抑えられるように、マウスウォッシュを使ったうがいをするなど、自分でできるケアから始めてみましょう。
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測定項目 |
わかること |
むし歯菌 |
むし歯の元となるむし歯原因菌の活性度 |
酸性度 |
歯を溶かしてしまう酸の強さ |
緩衝能 |
酸性になった口の中を中性に戻す力の強さ |
白血球 |
菌の繁殖などにより生じた炎症の度合い |
タンパク質 |
出血などの口のトラブルや細菌の繁殖 |
アンモニア |
口内の清潔度 |
むし歯は早期発見、早期治療をすることが大切です。1つの方法として、歯科医院で定期的に検診を受けてみるのもおすすめです。
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また、検査結果をもとに、自分の口内環境に合わせたセルフケアの方法や生活習慣などもアドバイスしてもらえるため、むし歯の予防にもつながります。
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