知覚過敏が悪化しやすい食べ物と摂取したい栄養素

知覚過敏が悪化しやすい食べ物と摂取したい栄養素

この記事では、知覚過敏になりやすい食べ物やしみやすい食べ物、摂取したい栄養素について開設します。

               
歯がしみる、痛いといった知覚過敏の症状には、食べ物や飲み物が非常に影響します。知覚過敏を悪化させる酸性の食品や甘いもの、冷たいものなどは避け、歯の石灰化を促したり、象牙質の形成を助けたりする栄養素を含む食べ物を摂取することが大切です。

知覚過敏について

知覚過敏は、正式には「象牙質知覚過敏症」と呼ばれます。歯のエナメル質が失われたり歯ぐきが後退したりして象牙質が露出することで、歯がしみたり痛んだりします。

Haleonジャパンが2024年12月~2025年1月に20歳〜74歳の男女4000人を対象に実施した調査 によると、20~30代の 約60%が歯がしみることがあると回答しました。さらに、歯がしみることにより、「しみる歯を避けて食べ物や飲み物を摂取する」「しみる食べ物を避ける」など、53%が食事中に弊害が生じていました。
このように知覚過敏の症状はライフスタイルにも影響を与えています。

食事が知覚過敏に与える影響

普段の食事が知覚過敏の発症や悪化のきっかけになる場合があります。
知覚過敏は歯のエナメル質が弱くなって象牙質が露出することで発症しますが、酸性の食べ物や飲み物はエナメル質を弱める原因となります。レモンやオレンジなどの柑橘類、炭酸飲料、酢を使った食品などは注意が必要です。これらの食品や飲料は、エナメル質を溶かし、歯の内部の象牙質を露出させるおそれがあります。

2023年にコロンビアで開催された国際歯科研究学会(IADR)において、象牙質知覚過敏症の欧州7か国大規模疫学的調査が発表されました。この調査結果によると、知覚過敏症状を感じる参加者は38~47歳のグループで最も多く、50%以上が知覚過敏は日常生活において重要な問題だと感じていました。
知覚過敏症状の自己申告をした参加者の飲食物の摂取頻度について見てみると、「食間にフルーツウォーターやフルーツティーを飲む頻度が高い」「酸性食品の摂取頻度が高い」場合に、知覚過敏症状のリスクが増加したという報告もあります。

酸性の飲食物は知覚過敏の原因になりやすい

歯の表面を覆うエナメル質は、「pH5.5」よりも酸性度が高くなると溶け出しやすいです。レモンやオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類、炭酸飲料、ワイン、ピクルスなどは、pH3前後〜pH4台と、エナメル質が溶け出す臨界pH値よりも酸性です。

そのため、これらの酸性の飲食物を頻繁に摂取すると、エナメル質が徐々に薄くなり、内側の象牙質が露出しやすくなります。その結果、冷たいものや甘いものなどの刺激が神経に伝わりやすく、知覚過敏の発症や悪化につながります。

知覚過敏を悪化させやすい食べ物や飲み物

次にご紹介するのは、知覚過敏の症状を悪化させやすい飲食物です。知覚過敏の症状を感じる方は、なるべく避けるようにしましょう。

甘いものがしみる

甘いものを食べた時に歯が痛んだり、しみたりすることを甘味痛といいます。
知覚過敏で象牙質が露出してしまった状態では、甘いものの刺激が神経に伝わると痛みを感じます。
キャンディーやチョコレートは、知覚過敏や歯の隙間に入り込みやすく、痛みを引き起こしやすいため避けるようにしましょう。
とくに口の中で長時間糖分が残るものは注意が必要です。キャラメルも粘着性があり歯にくっつきやすく、痛みが起きる可能性が高くなります。

熱いもしくは冷たい食べ物や飲み物はしみやすい

コーヒーや紅茶、アイスクリーム、スープといった熱いものや冷たいものは、歯に強い刺激を与え、知覚過敏による「しみる」症状を引き起こしやすいです。
また、季節による気温の変化も知覚過敏の悪化に関係があります。特に寒い季節は、冷たい風に当たることで歯がしみたり、温かい飲み物を摂る機会が増えたりしがちです。

アイスクリームなどの冷たいデザートのあとに、温かいコーヒーを飲むなど、極端に温度差のあるものを一度に摂取することも痛みの発生につながります。
コーヒーは酸性度がエナメル質の臨界pH値よりも高いため、知らず知らずのうちにエナメル質を傷つける可能性もあります。
知覚過敏の予防や悪化防止のため、日々の飲食や生活環境にも気を配りましょう。

知覚過敏を防ぐ食習慣・おすすめの食べ物

知覚過敏の方が意識したい食習慣や、おすすめの食べ物をご紹介します。歯がしみる、痛いと感じる方は普段の食事に取り入れてみましょう。

食べ方のポイント

柑橘系や酸っぱいもの、甘いものなどを食べた後は、すぐに口をゆすいだり水を飲んだりして酸を中和することで、歯へのダメージを防ぎましょう。口の中に長時間食べ物が残っていたり、だらだらと食べ続けたりしないことも大切です。

唾液には酸性に傾いた口内を中性に戻す役割があります。そのため、よく噛んで食べることも知覚過敏の刺激を防ぐために重要です。

食べ物のポイント

食べ物の組み合わせを工夫することで、知覚過敏の悪化を防いだり改善したりする効果が期待できます。
知覚過敏の改善に効果的な食材は、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品、繊維質が豊富なりんごやセロリ、緑黄色野菜、魚やナッツなどがあります。

柑橘類や酢を含む酸性食品は避けるべきとされますが、ヨーグルトと一緒に食べることで、柑橘類の強い酸味が知覚過敏を感じる場所に直接接触しにくくなり、酸のダメージを和らげることができます。同時に、ヨーグルトはカルシウムやリンを多く含むため、歯の再石灰化を促すメリットもあります。

酸が強いワインは、おつまみにチーズを選ぶことで歯への負担を軽減できる可能性があります。チーズはアルカリ性の食べ物のため、ワインによって酸性に傾いた口内を中和する働きをしてくれます。チーズもまた、カルシウムやリンを含むため、むし歯予防にも効果的とされています。
乳製品や豆腐、おかゆやゼリー飲料などは歯への刺激が少なく、かつ栄養も摂取できるためおすすめです。

歯を強くする栄養素

知覚過敏におすすめの食材に含まれる栄養素にはどのような働きがあるのかを解説します。

カルシウム

カルシウムは、歯の表面にあるエナメル質の再石灰化を助けるために欠かせない栄養素です。十分なカルシウムを摂ることで、唾液中のカルシウムによってエナメル質が再石灰化され、傷ついた部分が自然に修復されることが期待できます。

マグネシウム

マグネシウムは、歯や骨の形成に欠かせないミネラルの一つです。特に、歯の表面を守るエナメル質や、歯の内部構造である象牙質の健やかさを保つために重要な役割を担っています。歯は主にカルシウムやリンから構成されていますが、マグネシウムはそれらのミネラルの働きを助け、歯を強く健康に保つサポートをしています。
マグネシウムは、穀類・野菜などの植物性食品、魚介類・海藻類・豆類に多く含まれます。

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムの代謝を助けたり、歯や骨の石灰化を調整したりする働きがあります。きのこ類、魚介類、卵類、乳類に多く含まれています。

ビタミンC

ビタミンCは、歯の象牙質の形成に重要な栄養素です。傷ついたコラーゲンを再生・修復する働きや、抗炎症作用もあります。
ビタミンCが多く含まれる食べ物はレモンを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、知覚過敏の人にとって柑橘類は避けたい食材です。ビタミンCはカボチャ、ピーマン、パプリカ、ブロッコリー、ケールなど色の濃い野菜にも豊富に含まれているため、積極的に摂取しましょう。

リン

リンは歯の再石灰化を促す栄養素ですが、保存性や食感を良くするなどの目的で、加工食品にはリン酸などのリン化合物が添加されていることが多く、過剰摂取のリスクが高いとされています。
リンの過剰摂取は、カルシウムの吸収を阻害し、骨からカルシウムを流出させてしまうため注意が必要です。

鉄分

鉄分が不足すると血流が悪くなり、歯や歯ぐきに十分な栄養が行き渡らなくなります。これにより歯ぐきの健康が損なわれやすくなり、歯ぐきが弱くなることで歯ぐきが下がり、象牙質が露出しやすくなります。象牙質が露出すると外部からの刺激が神経に伝わりやすくなり、知覚過敏が起こる原因となります。そのため、鉄分を適切に摂取することが大切です。

こんな食習慣も口に影響する  日本人に多い「誤った食習慣」

近年の日本人に多い食習慣の問題として、塩分過多、不規則な食事時間、間食の習慣などがあり、口内環境にも影響を与えます。

例えば、日本人の多くが好むラーメンは、口内環境を悪化させる要素があります。あまり噛まずに食べてしまうため、唾液の分泌が少なくなります。また、ラーメンは塩分が多く、味覚障害を引き起こす場合があります。インスタントラーメンの場合は、化学調味料によって口内炎ができるリスクも高くなります。
濃い味を食べていると塩味を感じにくくなることがあり、さらに濃い味を好むという悪循環に陥ってしまうおそれがあります。

日本食が塩分過多になりやすいといわれる理由は、ごはんを食べる時に、塩分が多いおかず、梅干し・漬物などのごはんのおとも、味噌汁などを一緒に食べる習慣があるからです。
塩分過多は、口内の乾燥やドライマウスの原因になります。唾液の分泌が低下することで、むし歯や歯周病のリスクにつながるのです。
しかし一方、日本食は主食、主菜、副菜、汁物など、バランスの良い食事になっており、さまざまな栄養素を含む食材が使われるといった良い面も多くあります。

知覚過敏に効果的な食事をしましょう

知覚過敏は、普段口にする食べ物によって発症したり悪化したりするおそれがあります。知覚過敏の症状がある方は、今回ご紹介した避けるべき食べ物を把握し、改善に効果的な食べ物を意識して摂取するようにしましょう。

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